第百七十七話 美容魔法 2
「あんたたち私を見て何か気付かない?」
「別にいつも通りだけど?」
「もうっ、にっぶいわねー。頭の中にウミウシでも詰まってるんじゃないの? あんたたちと私のビューティフリーな顔を見比べてみなさいよ」
んー見ても分かんない。強いて言えば地味くらいじゃ? あたしやモモに比べてこの娘、鼻が少し低いし唇も薄い。
「むー、そう言えばあんまり日焼けしてないような気もしますねー」
モモがアイをジロジロ見てる。あたしたちはしっかり日焼け止めを塗ってるからそんなに日焼けはしてないんだけどアイは特に白い。もしかして?
「もしかして、日焼け止めの魔法も有るの?」
「そう、やっと気付いた。あと、まつげエクステと脱毛とアイカラーチェンジとヘアカラーチェンジとネイルの魔法も覚えたわ」
そう言えばよく見るとアイの目がぱっちりしてるような。まつげが増えてるし、黒目が大きくなってるような? 脱毛とネイルは魅力的だわ、ってそうじゃないわ。
「アイ、それって戦いの役に立つの?」
「何言ってるのよ。戦ってなんかいいことあるの? 女の子なんだから強くなる事より可愛くなる事の方が重要でしょ」
どの口が言ってるのよ。隠れてリンゴであたしより腕力強くなってるくせに。
「そう言う考えもあるかもしれないけど、あたしたちはドラゴンと戦う力をつけるためにここに来たんでしょ」
「まあまあ、それはエリとモモが頑張ってくれるでしょ。これから戦い系の魔法もちゃんと練習するからさ。それに魔力が上がってるからマジックミサイルだけで大抵の敵はなんとかなるわよ」
「けど、そんな魔法、誰に教えてもらったのよ。聞いた事も無いわ」
「そんなの作ったに決まってるでしょ。まあ、パンドラには色々手伝ってもらったけど」
まじか、そんなに子供の工作みたいに魔法って作れるものなのか? けど、この娘の知力と魔力の高さから考えると、無理じゃない気もする。
「それより、アンタたちも気になるでしょ。今日は特別に無料で施術してあげるわよ」
施術ってエステティシャンかよ。まあ、けど、興味ないが無い事もない。
「まずこれは『UVカット』の魔法。体を日焼けの原因の紫外線から守ってくれるわ。結界の魔法を改造して作ったものよ」
アイの手から出た白い光りがあたしとモモに吸い込まれていく。一瞬肌が白く光ったような。なんか涼しくなった気がする。
「これが『ネイル』の魔法」
アイが触れたあたしたちの爪の色が変わる。あたしは水色でモモは黄色。
「ネイルはもっと凝ったのも出来るけど、時間がかかるから今日はシンプルで。あと、せっかくだからタトューもしてみない? これはリラックスしてもらわないと抵抗されると失敗するのよ。なんか好きな図柄を言って」
「はいはい、私は天使の羽根。肩に羽根を書いてください」
モモって羽根が好きなのね。あたしは思いつかないなー。花がいっかなー。
「あたしは小っちゃいバラの花がいいわ」
「分かったわ。二人とも目を閉じてリラックスして」
あたしはアイのそばで目を閉じる。手にアイの手と思われるものが触れる。
「はい、いいわよ」
あたしは目を開ける。体を見渡してもバラは見あたらない。失敗したの?
「どこに羽根書いたんですか?」
モモも無いみたい。あたしはモモの顔を見る。ん、額になんか書いてある。『胸デブ』? と言う事は。
「キャハハッ。エリなんですかそれ。『性悪』っておでこに書いてありますよ」
「あんたは『胸デブ』って書いてあるわよ。アイ、消して! 今すぐ消して」
「無理でーす。24時間は消えませーん」
くっ、ムカつくわ。油断した。やられたわ。
「お前たち、ぐずぐずしてないで戦うわよ」
妖精が飛び上がっり膨れ上がり巨大な竜が現れる。
「アイ、覚えてなさいよ」
パンドラとの模擬戦が終わったら、絶対復讐してやるわ!
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