第百七十六話 美容魔法 1
「そんな事より、あんたたちの目は節穴なの?」
アイがまた煽ってくる。いい加減ウザイ。けど、レインボーフルーツをそんな事って、三倍よ三倍! 節穴って何か見落としてた?
アイがローブの裾をゆっくりとまくり上げる。え、こいつ何してんの? あたしたちに色仕掛け? そんな細い足見ても何とも思わないわ。モモの足は私でも触りたくなる事もあるけど。どうでもいいけど生意気な事に白いわねー。日焼け止めは塗ってるけど、どえしてもあたしは少し日焼けしてる。もしかしてこれ? アイは日焼けしない体質なの? さらに裾を上げて右足を前に出す。
「え? 蜘蛛?」
アイの太ももには入れ墨、今にも動き回出しそうな蜘蛛の入れ墨がある。前にお風呂ではそんなの無かった。島で彫ったの?
「ほら、なんか悪そうでしょ」
アイが悪戯っぽく笑っている。街にはファッションで入れ墨してる人はそこそこいるけど、あたしは王族だから絶対禁止だ。少し面白そうだなーって思った事はあるけど、彫ったら消えないものだし。よく恋人の名前を彫ってる女の子とかいるけど、別れたらどうすんだよと思う。
「それ、いつの間に書いたんですか? 子供に蜘蛛は似合わんですよ」
モモがアイのももを近くでジロジロ見てる。
「子供ちゃうわ。書いたんちゃうわ。タトュー、タトューよ。いいでしょ。子供っぽい私もこれだけで大人の色気があふれ出るでしょ」
「大人の色気? そんなの出てないけど? アイ、あんた一生蜘蛛をつけたまま生きてくの? おばあちゃんになったらクモババァって呼ばれるわよ」
「ふふっ。そう思うでしょ。けどこれは魔法なのよ。もっと人がタトューしてた時の魔法。不要になって時の流れに埋もれてしまった古代魔法『24時間タトューの魔法』よ」
「えっ、何それ。あんたそんな魔法に魔法容量使ったの?」
人が使えるようになる魔法の数には限りがある。それを魔法容量って言ってて、それには個人差がある。けど、それに一次的に入れ墨する魔法を使うなんてアホだ。アホだと思ってたけど本物のアホの子だ。
「それで、もしかしてそれってなんか他に効果があるんですか? なんかの抵抗が上がるとか?」
「んーん、無いわよ。強いて言えば普通のタトューと一緒で書いたとこが代謝が悪くなったり汗かきにくくなるくらいじゃないの? まあ一日だけだから問題無いと思うわ。そんな事より可愛いでしょ。可愛いだけで十二分でしょ」
可愛いだけって、デメリットしか無いじゃん。本当、おバカなのか?
「ああーっ。エリ、目が死んでる。アンタ私がバカな事してると思ってるでしょ。けどさ、アンタだって思った事あるでしょ。ビーチでビッチなお姉さんたちがタトューしてるの見て可愛いなって。この魔法だとデメリット無しで描けるのよ。やっぱ水着だとあんまお洒落できないじゃん、けど、これがあると自分の自身の体を飾り立てる事が出来るのよ一瞬で。当然水で落ちたりはしないわよ。まあ、実用性だって少しはあって、体に一次的に魔法陣を刻む事だって出来るわ。面白そうでしょ」
うん、あたしも生まれ変わったら一度は彫ってみたいなーって思った事もある。
「これだけじゃないわよ。私の美容魔法はまだまだあるわ。多分、私に足向けて寝られなくなるわよ」
あ、そう言えばアイに美容魔法ってスキルが生えてたんだ。ステータスの高さにもってかれて忘れてたわ。
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