第百七十一話 ガンぎまり
『こんなんでなんで強くなるんだろうか?』
僕は心の中で独りごちりながら、みんながフルーツを食べるのを見ている。
朝起きて川で顔を洗ってご飯食べた後に、洞窟でスライム狩り。そして、昼ご飯食べてスライム狩り。そして夜ご飯食べてスライム狩り。そしてお風呂に入って就寝。要は一日中僕は機械のようにスライムを狩り続けている。決して楽しくは無いんだけど、女の子たちにお願いされたら断れない僕がいる。
「なに人のドリアン食べようとしてんのよ」
赤色のドリアンをモモからエリが取り上げている。キングスライムを倒したら出てくるドリアンには幾つかの色があってその色で誰のものか決まってるらしい。そんな一人でまるまる食べずに、分け合えばいいのに。なんか兄弟が多い家のご飯の取り合いみたいだ。
エリの手にしてるケバケバしい赤色のドリアンの上を妖精パンドラが華麗に舞う。キラキラと光の粉が降り、それがドリアンに注ぐと真っ赤なドリアンが黄金色に変わる。それを満足そうにエリが見てピーナッツの皮でもむくかのようにドリアンを割る。そして木製のエリ専用トングで器用に実を取って食べてる。エリの顔に蕩けるような笑顔が浮かぶ。人間ってこんな幸せそうな顔できるんだな。エリは最初は臭い臭いと騒いでいたが、今はむしろ気に入ってるみたいだ。
その横ではアイが妖精に粉をかけてもらって金色になったバナナを皮ごと食べていて、さらにその横ではモモが金色のミカンを皮ごと食べている。どうも彼女らのなかでは、フルーツは皮ごと食べるものらしい。ワイルドだ。さすがにドリアンの皮は食べてないけど、種は焼いて食べてる。凄い執念だ。
それにしてもみんな美味しそうに食べている。ドリアンの悪臭の中。鼻が曲がりそうってこういう状況なんだな。どうも普通のドリアンよりも金色のドリアンの方がより臭い気がする。2倍くらい。あんまりにも美味しそう食べてるから興味がわいて1個貰おうと思ったけど、それは酷く拒否された。「ハルトはもう十分だから、今はあたしたちに譲って」とエリに涙目で頼まれたら、もう食べたいって二度と言えないよ。もしかしたら、妖精の粉になんらかの常習性があるのかもしれない。ヤバい粉なんじゃ? エリたちはラリってるように見えない事もない。ガンぎまりだ。他人に渡したくないような独占欲がわき、口にしたら満腹でも止まる事なく食べつづけ、夢の中にでもいるかのような幸せそうな笑顔を浮かべる。これって間違いないんじゃないだろうか? うん、そうだな、僕は絶対口にしないどこう。まあ、みんな幸せそうだし、副作用も無いようだから暖かく見守る事にしよう。
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