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 第百七十話 混浴


「さすがにそこの破廉恥妖精みたいに裸で入るとは言わないわ。水着着るからいいでしょ。パンドラ、いつもの姿に戻りなさいよ。で、水着だして」


 エリの言葉にパンドラが小っちゃくなって飛んでいく。えりは「いいでしょ」って一応僕の了解を取ろうとしてるけど、いつも口だけだ。答えを聞かずに行動する。


「しょうが無いわね。水着出さないとお前たちの事だから裸で飛び込んできかねないかしら」


 なんだかんだでなんかパンドラもエリの言う事聞いてるよな。あ、もうちょっと見とけば良かった……大っきいパンドラ……


「エーリー、ハルトー」


 空からは天使が降りてくる。背中にはアイが乗っている。


「あんたたちも水着に着替えなさい。ハルトの前じゃなくて、ちゃんと岩陰でね」


「別に私は水着要らないですよ。お風呂は裸で入るものですよ」


「着なさい。着ないとぶん殴るわよ」


 なんかエリとモモが掛け合いしてるけど、もしかしてみんなで浴槽に突撃してくるつもりか? 僕はひとっことも一緒に入っていいとは言ってないんだが、どこに行った僕の意思……



「ああーっ。綺麗な星空ねー。狡いわハルト、これを独り占めするなんて」


 エリが星空に向かって両手を伸ばす。星明かりに照らされたエリはとても綺麗だ。メタリックな水着? がキラキラしてる。金色のビキニアーマーをめっちゃ気に入ってるな。下着で水着で鎧で健康器具。便利だなー。けど、そんな事より狭いよ。奴らはゲシゲシ僕に当たってくるけど、僕は当たらないように気をつけてる。コンプラって奴だ。エリは悠々と手を伸ばしたり出来るけど、僕はほとんど動けない。変な体勢になってる。きつい。どうしてこうなった?


「主様、もう出荷しましょうよ。邪魔ですよね?」


 パンドラが僕の頭の上で危険な事を言ってる。出荷も何も王国では人身売買は犯罪って事から教えないとな。


「モモ、もうちょっと詰めなさいよ。狭いわよ」


 モモの背中でアイが文句言ってるが、彼女が真ん中で1番スペースを取ってる。1番小っこいのに。全体的に。そう言えばアイだけ昼と水着が違う。昼は紺色だったけど今は白だ。幾つ持ってるんだろう?


「押さないでくださいよ。狭いなら離れればいいじゃないですか?」 


「何言ってるのよ。私はアンタたちと違って繊細なんだから。ほらほらもっと前に行って」


 モモの方を見ると、モモの前には水着に包まれたタコさんの頭みたいなのが二つ浮いている。すげぇ。デカいと浮くんだ。けど、水着も凄いな。ピタッと貼り付いてて伸縮自在。もしかしてエリのと同様なんらかの魔道具なのかもしれない。

 アイがグイグイとモモを押してる。


「あちちっ。ちちがあちちっ!」


 どうやらアイに押されてモモのお胸が風呂の縁に当たったみたいだ。まあ、ちょっと熱いけど、火傷はしないだろう。僕もエリも平気だし。けど、なんでアイはモモの背中にぴったりくっついてるんだろう?


 ぶわしやーっ!


 モモが浴槽から浮き上がる。


「ちょっとー」


 バシャン!


 モモの背中からアイが落ちる。


「あちっ。あちちっ。熱くて触れない。助けて、だれか助けなさいよ。あちっ」


 アイが暴れている。狭いのに。手足が当たってるよ。そんなに熱くないから演技だろうけど、迫真だなー。けど、助けるもなんも、水着の女の子に触るのはNGだろう。


「暴れるから当たるのよ。じっと浮いとけばいいわよ」


 エリの言葉にアイは動かなくなる。風呂の中で潜るのは止めて欲しいものだ。子供じゃないんだから。


 僕らは星明かりの下、露天風呂を心ゆくまで楽しんだ。

 僕は家の外の切り株に座って余韻を味わってる。露天風呂は好評だった。なんかアイだけ不満そうだったけど。まさか最後まで浮いてるとは思わなかった。途中で息継ぎしながら。もしかしたら、それが王都流のお風呂の楽しみ方なのかもしれない。王都の女湯ではみんな体を丸めて浮いているのだろうか? 

 それにしても、少しそうなればいいなーとは思ったけど、まさかみんなが乱入してくるとは思わなかった。まさかこんな僕が女の子たちと入浴する日が来るとは……

 昔、一人で入ってた時より、星がとっても綺麗に感じた。

 思い起こすと、ここには修行に来たはずだけど一日中遊んでただけのような?



 読んでいただきありがとうございます。


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