第百六十七話 星空露天風呂
「いい湯だったわ。ありがとうハルト」
エリの体は若干火照ってるように見える。灯りのせいかもしれないが。
「さいっこーでした。ありがとうございます」
モモは羽根で自分を煽いでいる。便利だな。長く入ってたみたいだから少しのぼせ気味なのかもしれない。
「アンタにしてはやるじゃない。お湯、冷えないうちに入って来なさいよ」
アイはそう言うと、僕を引っ張り部屋から追い出そうとする。ん、筋トレでもしたのか? 心なしかアイの力が強くなったような? アイの表情も穏やか。どうやら3人仲良く入浴してきたみたいだ。昔に作ったデカすぎる浴槽と交換して良かった。僕は満足して風呂へと向かう。
「主様、しっかり完全に完膚なきまでに綺麗に掃除しときましたっ! ブタ共のくせに主様を差し置いてけしからん限りです」
パンドラが僕に敬礼する。ブタ共って、まあ、エリたちの前では言うのが減っただけマシか。
「ありがとう」
本当はちょっぴり余計な事しやがってとか思ったけど口に出さない。別にそこまで徹底的に掃除なんかしなくても良かったのに。髪の毛とか髪の毛とか髪の毛が少し浮いてたとしても僕は気にしないよ。男の子だからね。僕は洗い場でパンドラにお湯をかけてもらって、体を洗ってから浴槽に浸かる。
「ふぅあああああーーっ」
つい声が出てしまう。いいー温度だ。パンドラが調節してくれたみたいだ。かけ湯、シャワーが出来て風呂掃除も得意。パンドラは有能だな。僕の従者を辞めたとしても、銭湯の店員として食ってけるだろう。て言うかもしかして、本当はお風呂の妖精なのか? 見上げれば満天の星空。前は星の名前に興味が無かったから知らなかったけど、街に帰ってから調べたから、全ての星座が頭に入ってる。今は天の川は水平線にあるけど、時間が経ったらもっとよく見えるはず。覚えた星図で星座を探すけど、図と違って、一つ一つの星座が大きく感じる。南の真ん中の白くて明るい星はスピカ。その回りは乙女座。なんか星図に書いてあった乙女座の絵は、顔が濃くて羽根が生えてて横たわってた。顔は誰かって言えばエリだけど、羽根が生えて寝てるって言えばモモだよな。モモは食べてゴロゴロしてるイメージが強いもんな。
「主様」
パンドラが話しかけてくる。
「それで、いつ出荷なされるのですか?」
「出荷?」
「はい、出荷です。ブタ共を売り払うんですよね。ブタは太らせて食えって言いますからね。餌を食わせて太らせて、綺麗に洗って身だしなみを整えて少しでも価値を高めて出荷するんですよね?」
ん、なんだそれ? パンドラ、盛大に勘違いしてるな。なんか大人しくエリたちに尽くすなと思ったけど、どっかに売っぱらうつもりだったのか。けど、ここで否定すると、またけんか腰になるかもしれないしなー。
「うんうん、まだ早いよ。もっと頑張らないとねー」
ま、適当な事言っとこう。
「畏まりました。不肖パンドラ。誠心誠意全力をかけてブタ共を肥育していきます。どこのブタにも恥じない立派なブタにしてみせます」
なんか言ってるけど、要はしっかり面倒みてくれるって事だと思うから、ま、いっか。
エリに会うまでの1年。僕は一人で、星を眺めても綺麗と思うより寂しくなる事の方が多かった。けど、今回はみんな一緒だ。最初は来るのは嫌だったけど、今はそこまで思わない。みんなのお陰だな。まあ、少しだけ残念なのは、一人のお風呂はちょっと寂しいな。とは言っても誰か入って来たらパニックになるとは思うけど。
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