第略六十四話 希望 (エリ視点)
「じゃあ、僕、色々準備があるから、先に家に帰るね」
そう言うとハルトは逃げ去った。妖精もついて行ってる。臭いが耐えられないんだろう。けど、好都合だ。これからのあたしたちの育成計画を話すのに好都合だ。
「ねぇ、それで、ドリアンで何が強くなったの?」
アイが口を開く。むせ返るような悪臭。その激しさにイラッとする。
「あたしの方見て話さないで。横向いて話しなさいよ」
「えっ、どうして? もう臭いしないわよ」
「だから、こっち向くなっつってんだろ。その臭い口を閉じて。あんたは多分鼻が麻痺してんのよ」
「うわ、ひっどーい。女の子に口が臭いは禁句よ。それに、私の口が臭いんじゃ無くてドリアンが臭いのよ。それに、今後はアンタたちも食べるんだから慣れてた方がいいわよ」
確かにそうだ。このドリアンはヤバい。ヤバすぎる。もし、市場に出回ろうもんなら、値段は青天井になる事だろう。その効果が知れ渡ろうもんなら、この実一つで戦争が起きてもおかしく無い。
「それで、効果はどうだったんですか?」
空から戻って来たモモが能天気に尋ねてくる。
「まず、その前に誓って欲しいの。この実の効果は絶対他言しない。あと、この実の存在自体を隠す事、それと、島からこの実を絶対に持ち出さない事」
二人があたしをじっと見つめてくる。先にモモが口を開く。
「当然じゃないですか。そもそも、アンブロシアの事も秘密なんですからね」
なんだかんだで、モモはやっていい事と、やっちゃダメな事の線引きは出来ている。信頼していいだろう。
「まあ、私もそれは守るわ。すっごい効果なんでしょ。世間を混乱に巻き込むような。私はそんなのに巻き込まれるのは勘弁だから」
まあ、アイもここまでついて来たし、関わったんだから、信じるしか無いわね。あたしは説明する事にする。
「なんと、ドリアン食べたアイのステータスね、全部1ポイントづつと、知力は2ポイント上がってるのよ」
「ええーっ! まじで! 通りでなんか賢く強く美しくなったような気がしたわ」
そう、さっきのフルーツのドカ食いで、アイは知力が14ポイントも上がった事になる。なんと知力は33。ドラゴン相手に隕石魔法を放った宮廷魔術師の知力が25だった。一回の食事でそれを軽く抜き去ってる。多分、今やアイの知力はこの国でトップクラスだろう。けど、上には上、あたしとハルトが居るけどね。上手く調整しないと、アイに知力で抜かれたらなんか嫌だ。
「ちょっと待ってください」
モモの鼻息が荒い。
「さっきはパンドラに祝福してもらって無かったですよね。と言う事は祝福してもらったら、更に倍!」
「そうね。そう言う事になるわ。それにパンドラの祝福はハルトのスキルの確立を倍に出来ると思われるわ。前は100匹のスライムで1個落ちてたけど、今回約500匹のスライムを倒して8個。少ないのはあたしやパンドラが戦ったから。ハルトだけに戦って貰ったら、10個は落ちてたと思う。それにキングが今までドロップしなかったのは倒した数が少なかったから。多分、祝福されたハルトにキングを50匹倒させたらドリアンが1個落ちる。それに多分ドリアンは他にも色があると思うわ。今回のドリアンはイエローのキングが落としたと思われるから、青とか赤とかのも落ちるはず。そしたら、それに対応したステータスが2上がるはずよ」
上手くやったら一日にフルーツを50個、10個に1個ドリアンとしたら、それも祝福で倍になるとしたら、ざっくり一日140ポイントのステータスが上がる。それが30日で4200。三人で割ると800。あたしたちはハルトの半分くらいの強さに成れる可能性が。得意分野に特化させるから、ハルトを抜けるステータスに成れるかもしれない。あと、問題は、あたし、食べられるかな? ドリアン……
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