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 第百六十三話 ブーメラン


「アイ、それくらいにした方が良くないか?」


 あんまりエリを追い詰めたら暴れる。多分暴れる。そして、僕にも被害が。


「何言ってるのよ。私はいっつもなんにも取り得無いってエリに甚振られてるのよ。こんな弱点を攻めるチャンス逃す訳無いじゃない。カマトトぶった奴の化けの皮を剥がしてやるのよ」


「ん、聞いていい?」


「なによ」


「カマトトって何? 聞いた事無いんだけど?」


「しょうが無いわね。アイ先生が教えたげるわよ。耳かっぽじって良く聞くのよ。『かまとと』って言葉は昔、女の子が『蒲鉾かまぼこととからできているの?』と、わかりきっていることを知らないそぶりで聞いた事から出来たものよ。様は色々知ってるのに『うぶ』を装ってるその女のような事よ!」


「何よソレ。あんた喧嘩売ってるの? あたしはエレガントに生きたいだけよ」


「ふっ、エレガントですって、じゃあ、エレガントにドリアンのこの臭いを例えてみなさいよ」


「くうぅ」


 エリが黙る。けど、この臭いをエレガントに例えるって無理だ。けど、そんな汚い例えはよろしく無いと思うよ。食べ物だし。


「アイさー。変わりに僕が言ってあげてもいいけど、その後、それ食べるんでしょ。食べられるの?」


「…………そうね。ブーメランね。これ、私が食べるんだよね。変なイメージつけたら口に入れにくくなるわ。けど、これ、どうやって食べるの?」


「多分割るんじゃ?」


「ちょっとー。じゃハルト、割りなさいよ」


 まあ、アイもウザ絡みを止めた事だし、僕はドリアンを恐る恐る手にして力を入れる。さすが僕、フルーツ剝くののプロフェッショナルだ。綺麗に半分に割れる。


「うごっ」


 僕は急いでテーブルに置いて離れる。モモとパンドラは上空、エリはいつの間にか鼻を摘まんで退避してる。


 まじか、これ、食い物の臭いなのか? 


「ぬぇー、ファルトどぶなにほひなのー」


 鼻声のエリは『どんな臭いなの?』って尋ねてるんだろう。んー、エレガントに例えないと。


「うん、そうだ、動物が死んで時間が経ったような臭いだっ」


 僕は一気に言って鼻を摘まむけど、思い返すと全くエレガントにじゃないな。


「ハルト、気持ち悪い事言わないでよ。私、今からこれ食べるのよ」


 えっ、まじか、アイ食べるのか、それ! アイ、君には取り得があるよ。満腹なのにさらに食べようとする根性、それにそんな臭いものを口にしようとする冒険心と勇気。勇者、勇者だよ。


「じゃ、いっただきまーーーーす」


 アイはハイテンションで実のかけらを摘まんで口に放り込んだ。勢いで乗り切るつもりだな。


「うわっ。くっさーーーー。でも美味しい。とっても美味しいわ。今まで食べたフルーツで1番。さすがフルーツの王様ね。臭いも王様だけど」


 そう言うとアイは貪るようにドリアンを平らげた。大っきな種にしゃぶりついて実を綺麗に取っている。もう皮と種しか残ってない。お腹いっぱいって言ってたのにそんなに美味しいのか? 


 読んでいただきありがとうございます。


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