表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

162/225

 第百六十二話 舌禍の魔道士


「これって、ドリアン、ドリアンよね。誰か食べた事有る人っ!」


 アイが手を挙げて宣言してる。テンパって無いか? 心なしか目がグルグルしてるような。って、それドリアンって言ってたのアイじゃなかったか? 


「あたしの屋敷、家ではドリアンは禁止されてたらしいから、食べた事無いわねー。ちょっと触ってみていい?」


 エリは誰かに了解を取ってるけど、いつも通り返事を聞く事もなくドリアンを手にする。これってよく考えるとかなりのわがままさんだよな。子供の時に甘やかされたんだろうな。まあ、しょうが無い。可愛いから甘やかされたんだろう。もし僕に娘が出来てエリみたいだったら際限なく甘やかす自信がある。


「うっわ、おっも、このトゲ固いわね。これで人を殴ったら大怪我するわね多分」


 考える事がバイオレンスだ。なんでドリアンを手にした感想が殴る事なんだろう。危険を察知したモモが飛んで逃げてる。さすがにエリでも食べ物で殴ったりしないだろう。


「モモ、戻ってきなさいよ。叩いたりしないわよ」


 エリはドリアンをテーブルに戻す。


「ちょっ、モモ、嗅いでみて」


 エリは素早くモモに近づくと、その顔に両手を当てる。


「くっさ。エリくっさ」


 またモモは空へと逃げていく。


「ちょっ、臭いのはあたしじゃないわよ。ドリアンよ」


「だからってその臭いを顔に付ける事ないじゃないですか。顔が臭くなったじゃないですか!」


 モモは顔をゴシゴシしてる。けど、僕も気付いてた。なんかほんのりと臭い。もしかしたら誰かが粗相したのかもと思ったけど、僕じゃないから、女の子の誰か。女の子のそんなのを口にするほど僕は野暮じゃない。そう思ってたけど、ドリアンの臭いだったのか。


「うん、確かにくっさいわね」


 アイがドリアンをくんかくんかしてる。


「あたしたち遠くで見てるからさっさと食べなさいよ」


「ねぇ、エリ、この臭いって何かに似てなーい?」


 アイが目をキランとさせながらエリを見ている。反撃だ。多分反撃だ。アイは今、確かにエリに牙を剝いている。レコンキスタ。いつも虐げられているアイがエリに反撃の狼煙を上げた。


「ねぇ、口に出して言ってみて」


「そうね。なんて言うか、腐ったような、タマネギが腐ったような臭い?」


「ダウトっ! エリさん、本当にそうお思いになられましたの? そもそも、エリさんは腐ったタマネギの臭いなんか嗅いだ事無いんじゃなくって」


 なんか悪役令嬢のような口調で煽っている。うん、よくタマネギが腐ったようなって表現を臭いものに使うけど、確かに腐ったタマネギのような臭いなんか嗅いだ事ない。


「そっ、そうねー。硫黄、硫黄のような臭いよ」


「またまた嘘をおつきになられましたね。エリさん、硫黄の臭いなんか嗅いだ事無いでしょ。そんな教科書に載ってるような常套句じゃなくて、そのきれいなお口でお思いになられた通りの事をお素直にお口にお出しなさい」


 アイがエリになんて言わせたいのかは想像つく。やめなよー。それに、多分エリは貴族。その貴族をバカにしたようなバカに丁寧な言葉って貴族全員を敵に回してるようなもんだ。もしかしたら、このアイの舌禍で僕もとばっちりを食うんじゃないか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ