第百六十一話 躍り食い
「大漁ね」
確かに大漁だ。ドリアン含めてフルーツが7個も落ちた。けど、エリは何とも言えない顔している。
「うん、大漁ですね」
そう言うモモもなんか嬉しそうじゃない。
ドリアン以外のフルーツは、バナナ5個に桃とチェリー。
「凄いわ、凄いわ、サイコーじゃない!」
逆にアイはテンションマックスだ。なんなんだこの違いは?
「ものの見事にアイのばっかり出たわね」
エリが頬杖つきながら気怠そうに言う。
「アイのってどうゆう事?」
「あたしたち話し合ったのよ。バナナはアイの。桃とチェリーは最初しばらくはアイのって」
「えっ、なにそれ。仲良く分ければいいじゃない」
エリは全部アイに食べさせる気なのか? さっきなんか僕をのけ者にしてスイーツ食べたって言ってたのに。アイは小食だから無理だろ。
「出来ればそうしたいわ。けど、アイのためよ」
フルーツを沢山食べさせるのがアイのため?
「もしかしてアイは苛められてるのか?」
僕はアイに尋ねる。どうしても声が低くなる。なんか女の子のイジメって陰険って聞いた事がある。エリやモモは悪い人じゃない。けど、おせっかいとかが行き過ぎてやられてる側はイジメられてるって思ったら、それはイジメだ。自覚させて止めさせないと。
「そんな訳ないじゃん。勘違いしないで。むしろ私が苛める側よ」
アイは無い胸を反らす。もしかして、フルーツって大きくする効果があるのか?
「あんた、どこ見てんのよ。失礼な事考えてたでしょ。まあ、今の私はサイコーに機嫌いいから許したげるわ。ほら、パンドラ。さっさと祝福して」
「調子に乗るんじゃないわよ。これはお前のためじゃなくて、主様のためだからね」
パンドラはそう言いながらもフルーツの上を旋回する。粉が落ちてフルーツが金色に光る。
「いただきますっ!」
アイはフルーツを貪り始める。バナナを皮ごと食べてやがる。女子としてどうなんだ? しかも噛みついた所から見えるバナナの実も金色だ。そして、金色になりながら、バナナ、チェリー、桃、そしてバナナ、バナナと一気に食べる。チェリー、枝ごと飲み込んだよね。桃って確か真ん中にでっかい種あったような? 確実に女子捨ててるよ。そんなにフルーツ好きなのか?
「ぐふぅー。ふわぁ。満足満足。もう食べられないわー」
アイ、今、なんか吐きそうな声出したよな。大丈夫か? 戻したりしないよな?
ドンってエリがドリアンをアイの前に置く。
「何言ってるのよ。まだこれが有るじゃない。多分黄色いからバナナの進化版よ」
バナナの進化版って意味は分かんないけど、さすがにアイはもう食べられないんじゃ? やっぱ新手のイジメなんじゃ?
「アイ、もう食べられ無いんだろ。とってて後で食べれば?」
「いーや。今食べるわ。とってたら、絶対に誰かに食べられるわ。こんなチャンス滅多に無いから。今、私は試されてるのよ。限界、限界を超えないと強くは成れない。私は私自信の胃袋の限界を超えてみせるわ!」
とってたら食べられるって。みんなそんなに意地汚く無いだろう。頭に必死でフルーツを食べてたエリを思い出す。うん、食べられるな。けど、なんで彼女たちはこんなにフルーツに餓えてるんだろうか? 強くなるとか、限界を超えるとか、将来フードファイターにでもなるつもりなんだろうか?
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