第百五十九話 スライムの海
遅れてすみません。うう、また寝込んでました。
「エリっ、モモっ、逃げろっ!」
僕の声虚しく、エリとモモはスライムに飲み込まれていく。モコモコ湧いていくスライムはまるで、虹色の泡みたいだ。とりあえず暴れるしかない。
「主様、頑張ってー」
妖精が呑気に応援してくる。僕は手当たり次第足当たり次第スライムを潰していく。特に同じ色が重なってる所を。
「パンドラも戦ってよ」
「申し訳ございません。私はサポート専門ですので」
「サポート専門って、さっきガチでエリたちと模擬戦してたんじゃ」
「スライムは苦手なんですよ。汚れそうじゃないですか」
そうか、パンドラは綺麗好きなのか。なら仕方ないってなるかー!
「パンドラも戦って。自分のやった事には責任を持たないと」
「はーい、分かりましたー」
パンドラがスライムに突撃する。あ、そりゃ汚れるわ。頭から突っ込んでスライムに次々と風穴を開けていく。
「うぉおおおおおおーーっ!」
野太い声を上げながらエリが暴れている。エリが居るとこだけスライムの空白が出来ている。踊るように回りながら群れ寄るスライムをバシバシ弾いている。エリは大丈夫そうだな。ていうか怖えよ。明らかに常人の動きでは無い。残像で顔や手足が沢山あるみたいだ。昔古物商で見た事がある、東方の神様、千手観音の像みたいだ。あれって想像上の造形だと思ってたけど、実在するんだな。昔のエリのような戦士を見て誰かが作ったんだろう。怖いけど、美しい。無駄なくスライムを攻撃し続けるエリには神々しささえ感じてしまう。
「ほら、見てください。ふっかふかですよー」
見ると、モモがスライムの上で寝ころがれってボヨンボヨンしてる。モモのスライムもボヨンボヨンしてる。僕は凝視に堪えず目を逸らす。男の子には刺激的過ぎる。
「何遊んでんのよモモ。あんたスライム初心者でしょ。ずっと触ってると色々溶けるわよ。あんたはレベルが高いから大丈夫だと思うけど、服は普通のやつでしょ」
エリが戦いながら息も切らさず流暢にしゃべる。余裕って事だな。
「えっ、まじすか。そういえば、お尻がヒンヤリするような。もしかしてパンツ掃き穿き忘れたかも」
パンツ掃き忘れる? そんな事あるのか? 僕は今まで一回もそんな事無いな。
「見てたわよ、ちゃんとさっき水着から着替えたでしょ。だから、溶けてんのよ」
「うわ、まじだ。こんのくっされスライム共がっ! 私の正義を見せてやるわ」
「モモっ。見せるのは正義だけにしてね。お尻とかハルトに見せたら怒るわよ」
うわ、さすがエリ。僕は少し期待してたのに。
「ごめんなさい。やっぱ、今だけは正義無理です。背中も溶けそうです。さようなら」
モモは飛び上がるとこっちに顔を向けながら手を振ってアイのいる入口に飛んでいく。振ってるもう片方の手は胸を押さえている。と言う事は。惜しかった。もっと頑張れよスライムっ!
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