第百五十六話 狩猟再2(アイ視点)
「僕じゃなくてもいいんじゃない?」
どうやらハルトはスライム狩りに乗る気じゃないみたいだ。
「面倒かもしらないけどよろしく。ハルトじゃないと、フルーツがドロップしないのよ」
性悪姫がハルトに頼み込む。まあ、頼めばハルトは大抵の事はやってくれる。チョロすぎだ。
「別にフルーツが無くても、パンドラに美味しいものいっぱい持ってきて貰ってるじゃない」
「お願い。あたしたちはここのフルーツを食べたいのよ。モモもアイも食べた事無いから食べさせてあげたいのよ。ほら、あんたたちも頼みなさいよ」
「はいはい、私もフルーツ食べたいです!」
私は即座に頼む。そりゃそうよ、だってそのフルーツはアンブロシアだってエリが言ってた。アンブロシアって神様のフルーツ。食べるだけでステータスが上がるというぶっ壊れチートアイテムだ。食べて食べて食べまくって、性悪姫
や胸デブを追い抜いてやるわ!
「わっ、わたしもハルトが頑張って出したフルーツを食べたいですっ!」
頑張って出したフルーツ? なんか言葉が美しく無いけど、エリ的にはセーフだったみたいだ。姫様は下品NGだけど、下品ボキャブラリーが貧困だから、結構理解出来なくてスルーする事が多い。
「まあ、そこまで言われたらしょうが無いよね。じゃ、フルーツ狩りに行こう」
ハルトに連れられて私たちは洞窟に入っていく。洞窟は入口は狭かったけど、奥に行くにつれて広くなっていく。何も無い大部屋に出て、中央にハルトが歩いていく。そしてハルトが止まると、そこを中心に床に魔法陣が現れた。更に周りの床が光り螺旋状に小さな魔法陣が床を埋め尽くすように現れる。これは聞いた事がある。悪辣極まりない迷宮の罠『モンスターハウス』だ。私は直ぐに部屋を出る。魔法陣からは出るわ出るわ。色とりどりのスライムが所狭しと現れる。なんかここまでスライムが居るとジェリービーンズみたいだ。そしてハルトが走り出す。
「ブチブチブチブチブチブチ」
ハルトが歩く度に潰れていく哀れなスライムたち。なんか見てて楽しそうだけど、私には無理だ。踊ってるみたいだ。『人外ダンス』私は心の中でそう名づけた。それにハルトが倒した方がドロップ率アップのスキルがよく働くみたいだから見学に徹しよう。一分も経たないうちにスライムは全滅して消え去った。ここの迷宮はモンスターが消えるタイプみたいだ。
「あった。あったわよ。リンゴよリンゴ」
エリがリンゴを掲げている。ちっ。リンゴはエリのものだ。
「パンドラ、例のやつ試してよ」
「いいわよ。お前じゃなく、主様のためだからね」
妖精がリンゴの上を飛び回ると光りの粉が降り注ぎ、リンゴが金色に輝く。その金色のリンゴをエリが私に投げてくる。私は慌ててキャッチしようとするが、悲しいかな、手に当たって落ちそうになる。落としてたまるか! 私はなりふり構わずスカートを広げなんとか受け止める。ハルトにパンツ見えてないわよね?
「ちょっとー。いきなり投げないでよ」
「あんたニブすぎでしょ。不細工なキャッチねー。ほら、急いで食べて」
「毒味させるつもり?」
「それもあるけど、あたしじゃないと効果が分かんないでしょ」
まあ、そうだ。エリじゃないとステータスが何ポイント上がったか分からない。そこまで言うなら貰ってあげるわ。私は金色のリンゴを見つめる。歯が欠けたり、金色になったりしないわよね。さすがに歯が全部金色になったら可憐な私でも下町のブラザーみたいになってしまう。ラップは苦手だけど。
「急いでよ」
姫が急かす。しょうがないわね。私は意を決してリンゴに齧り付く。
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