第百五十四話 おうち(アイ視点)
まるで黒曜石のような光沢を放つ部屋を私は見渡す。壁には獣油みたいなものに火を付けたランプ? が掛けてある。
ハルトがテーブルに置いた、マッチと言ってた木材を手にしてみる。うん、只の木だ。奴はこれを摺り合わせて瞬時に火を点していた。けど、マッチというものは簡単に擦っただけで火を点けられる高価な薬剤がついたものであって、決して只の木じゃない。木ー摺り合わせただけで火を点けられるのは世界広しと言えどお前だけだわ。木造建築の天敵だわ。
いかんいかん、言葉に出しそうになるが我慢する。エリはハルトが異常だと言うのは気づかせたくないそうだから。もっとも、本当は本人は気づいていて、私たちをからかってるだけなんじゃ? いくら無人島に1年居たからって常識無さすぎだろ。
私たちはハルトに案内されて各々の部屋を回る。部屋には土で出来た備え付けのベッドと椅子とテーブル、ランプもあってハルトマッチも置いてある。点けられんわ。まあ、他のランプで火を点けて持ってくればいっか。入口には木の扉があるけど、ハルトやエリが軽々開けてたから今気づいたけど、扉の木、めっちゃ分厚い。押しても引いてもウンともスンとも言わない。もしかして扉を閉められたら出られなくなるんじゃ? 牢獄かよ。それとも美少女監禁するつもりなの? ちなみにどうやって開けたのかは聞かないけど、部屋には空気孔が空いている。窒息死の危険は無さそうだ。けど、扉を閉めないように頼んどかないと、夜中に閉じ込められてトイレ行きたくなったりしたら地獄だ。私も一ヶ月の修行の後には自然にこの扉を開閉させられるようになるのだろうか? もしそうなったら、代わりに大事な何かを無くしてしまいそうな気がする。
あっ、そう、胸デブ。胸デブ天使も扉を……ゲッ、うんうん言いながらも開け閉めしてる。意外にやるわね。そう言えばコイツ、レベルアップで力がかなり高いんだったわ。って、開けられないのは私だけ? もしかして私がひ弱なだけなの? そんな訳無い。私の手のひらより分厚い扉だから開けられないのが普通なはず? ああ、私もそこの羽根豚みたいにもう少し賢くなければ。モモは、「ほぇー」とか「おおー」とか「すっごーい」とかしか言ってない。語彙が死んでる。けど、幸せそうだ。知恵というのは禁断の果実。賢くなるって事は気苦労が増えるって事だ。次に連れて行かれたのは物置きだそうだ。机の上に食器とか訳が分からない物が置いてある、その中目を引くのが一つのトルソー。
「えっ、なんでまだあるの?」
エリにしては慌てた声を出してる。トルソーが纏ってるのは、良く南国のダンサーが着ているような、ココナッツのブラジャーと腰蓑。それが3セット。よく見ると私たちのサイズに合わせてあるような? って失礼過ぎるでしょ。私のブラと思われるのだけ実が一回り以上小っこい。
「んー、まあ、一応、島気分を味わいたいかもって思って。前も着てたし」
ん、エリ、あんなエグい服を着てたの。
「ちょっと止めてよ。恥ずかしいじゃない。あの時にはしかたなしで」
ん、恥ずかしい? いつものゴールドのビキニの方が露出高いわよね?
そして、お家の案内のあと、私たちはエリに引っ張られてスライムの住処へと向かう事に。
まあ、愕くことは多かったけど、楽しい修行にはなりそうだ。
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