第百四十九話 好物(アイ視点)
「美味しい。美味しすぎるわーっ!」
残念触手乳ニワトリ頭女が、美味しそうにケーキを食べている。あれ、私が食べようと思ってたのに……大好物だから最期に食べようと思ってたのに……私は学んだ。美味しい物を最後に取っておくというのは平和な優しい世界でのみ通用するという事を。この混沌とした世界では美味しい物はソッコー食べる。そうしないと羽根が生えた悪魔の胃の中に収まってしまうと言う事を。
「おめー、そのケーキ幾つ目だよ。それよこせ。私が食べようととってたやつだ!」
「えっ、アイがとってたんですか? この世は弱肉強食。力が正義です。ちゃんと自分の取り皿に確保してなかったのが悪いです」
「おめー。ケーキを独り占めするののどこが正義だよ」
「美味しい物は正義。美味しい物にとって私の口に入る事が正義です。でも私は鬼じゃないので、最後の一口くらいあげますよ。アイちゃんあーん」
ケーキの最後の一かけをモモがフォークに刺して私の前に差しだす。私は口を開ける。はぁあぁー?
「はーい。ぱっくん。うーん美味しーい」
奴は翻して自分の口にケーキを放り込みやがった。
「うーん。物干しそうにしてるアイの前で食べるケーキ、サイコー! 勘違いしないでくださいね。アイ以外の人だったらちゃんと分けてあげてます。あなただから特別です」
「そんな特別いらんわ! 毟り取ってやる!」
私は立ち上がり、奴の無駄肉に手を伸ばす。ゲゲッ動きやがった。無駄肉は凹んでかわすと、私の手を弾く。体が流れた時にもう片方の無駄肉が。
「がふっ」
変な声が出る。見事なアッパーカットだ。私の視界が空の青に埋め尽くされる。綺麗な空だ。思った時には砂浜に背中から突っ込んでいた。熱い。熱いわ。
悔しい。私の戦闘能力ってあの無駄肉以下なのか。強くなる。絶対強くなってリベンジしてやる!
「なによ。それ。今明らかに伸びたわよね」
頭をはたいて砂を落として椅子に戻る。今は我慢の時。復讐はもっと強くなってからだ。
「何言ってるんですか。ゴムじゃないんですから伸びる訳無いじゃないですか。ほら、こうやって肩を動かすと伸びたように見えるんですよ」
奴は肩を交互に前後させ、無駄肉を突き出す。なんか武闘家が正拳突きしてるみたいだ。って明らかにブツが伸びてるよ。23センチは軽く伸びてる。キモいなー。自覚無いのか。私も少し巨乳には憧れるが、ああはなりたくない。ただの変態だ。顔が整ってるだけに残念だ。やっぱり幾つか賢さのバナナを分けてあげよう。
「お前たち、遊んで無いで早く食べ終わるのよ」
妖精が急かしてくる。で、私たちを回復させて何をさせるんだろう?
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