第百四十八話 祝福 (アイ視点)
「んー。美味しい。なんか体がポカポカするわ」
陰険王女が頬に手を当てて至福の表情を浮かべている。中身を知らなかったら心奪われそうなくらい可愛い。そのポーズいただき。
それにしても、本当に美味しい。そう、食べた後になんか暖かくなったような感じが残る。例えれば、寒い中で飲む温かいスープのような、温泉から上がったあとに涼んでる時のような。
「うわ、本当に回復してる。あたしの鑑定じゃ見えないわね。パンドラ、凄いわ。あんたの祝福ってどういう効果があるの」
「凄いでしょ。凄いでしょ。今日は気分がいいから特別に教えてあげるわ。ポーションとか食べ物とかの効果を少しアップさせる事が出来るのよ。まあ、私の少しだから倍くらいの効果にはなるんじゃないかしら。今なら大サービスよ。お前らブタの大好物のラリれるキノコでも持って来なさい。倍ラリれるキノコにしてあげるわよ」
「それって凄いですね」
モモが会話に入ってくる。
「そうですね。確かにトリュフという高級キノコは土に埋まってるのをブタに探させて掘るって聞いた事があります。って、私たちはブタじゃねーし。キノコなんかそんなに好きちゃうし、ラリれるキノコなんか持ってねーわ!」
この娘はちゃんと一々リアクションしてくれるからいじり甲斐がある。そして再びお菓子を貪り始める。うん、ブタみたいだよ。
「ちょっと待って、それって、アンブロシアにも使えるの?」
エリが妖精に声をかける。あ、それ私も思いついたのに。
「アンブロシア? それが何かは知らないけど食べ物だったらだいたいいけるわ」
「それで、祝福ってどうやってするの」
「簡単よ。私の唾をペペペッって」
えっ、まじか、汚っ!
「ブフゥ!」
モモが菓子を噴き出す。今の声、結構ブタ度高かった。
「冗談よ。そんな訳無いでしょ。こんだけの菓子にかけるならどれくらいの量になるのよ。羽根ブタ、お前もっと頭を使いなさい。頭の中までブタになるわよ。その前に、お前らには私の唾は十年早いわ」
「十年たってもいらんですよ」
ちゃんとモモが返す。
「ほら、見てなさい」
妖精はケーキの上に行くと、手から金色の粉を出す。それが降り注ぐとイチゴショートがまっ金々になる。
「ほら、食べなさい」
妖精がドヤ顔で勧めてくる。金色に光り輝くショートケーキ……そんなん食えるか! あ、徐々に色が元に戻って来た。
「贅沢なブタ共ね。鮮度が高い方が効果も高いのに」
ブタブタ言い過ぎだろ。ハルトが居ないからって。コイツ、ハルトの前では猫被り始めてるから、ハルトは私たちと仲良くなったって勘違いしてるし。
「鑑定できたわ。ブースト効果が、金色の時には2倍、それから色が落ちるに連れて効果が下がって1.5倍に落ち着いてるわ。多分いける。それがあればフルーツでの成長を2倍に出来るわ。凄い、凄いわ。さすがハルトの力を吸い取った妖精ね」
まじか。倍、倍は凄すぎる。ん、と言う事は、金色のフルーツを速攻食べないといけないって訳? なんかやだなー。絵ずら的に……
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