第百四十七話 スイーツ(アイ視点)
「さあ、ブタ共、貪るのよ」
船から降りた私達は邪悪な妖精に誘われて砂浜に来た。ちなみにハルトは先に奥に行ってここのハルトの家の整理整頓してる。
ビーチパラソルが刺さったテーブルには所狭しと世界各国のお菓子が並んでいる。ケーキ、クッキー、チョコに見事な飴細工、あれは月餅、東方和国の串団子やあんこたっぷりのおはぎもある。私のような有識者だとほとんど何か分かるけど、愚鈍な乳デブや世間知らずのゴリラ王女は知らないものもあるだろう。けど、なぜ? この世の邪悪を煮詰めて生まれたような妖精が私達にこんなものを振る舞う? 毒? いや、奴はそんな回りくどい事はしない。けど美味しそう。本当に美味しいお菓子は匂いが違う。多分出来たてを収納してから出したから鮮度がいいんだろう。クッキーなんかほのかに湯気が出てる。
「感謝しなさい。最後の晩餐よ」
邪悪な妖精が嘘くさい笑顔を顔に貼り付けてる。間違い無い。毒だ。例えばお腹下すやつとか。アウトドアの乙女の天敵は下痢だ。ハイキングとかでそうなろうものなら目も当てられない。私はシティガールだから、綺麗なトイレじゃないと無理だ。今回も業腹ながら妖精に個室の魔道トイレ一式持ってきてもらってる。けど、一式だ。みんながお腹を下したら誰かが犠牲者になる。
「お前たち、何警戒してるのよ。これらは私が祝福したスイーツよ。お前たちのちんけなHPとMPをフル満タンにしてくれるわ」
「本当かしら。パンドラ、食べてみて」
さすが陰険王女。私が言いたい事言ってくれた。
「何? お前たち私が毒でも盛ったって言いたいわけ? そんな事する訳ないじゃん」
「それって食べたらお腹壊したりしないですか?」
胸デブが恐る恐る手を伸ばしかけてる。羽根なんか嬉しそうにピコピコしてる。犬の尻尾かよ。
「私が下剤を盛ったとでも言うの? そんなメリット無い事しないわよ。それに下剤盛るならいつでもお前らの餌に混ぜ込めるわよ。ブタ共は食べ物に警戒心ゼロだし、耐性もくそ雑魚だし」
なんで、あんなに素直なハルトの力を吸い取ってこんな邪悪な生物が発生したのだろうか? 今の言い分だと、いつでも私達に毒を盛れるって事? 危険過ぎるでしょ。収納能力の便利さより、危険度の方が勝ってるような。船に乗ってるうちに捕まえて海に捨てるべきだったわ。
「いいわ。あたしは、あんたを信じるわ。なんだかんだであんたがハルトが望まない事する訳ないしね」
「そうよ。それに当然私も食べるわよ」
妖精は自分の頭よりおっきなクッキーを持ち上げると食べ始める。問題なさそうね。あたしたちはテーブルに付きお菓子を食べ始める。
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