第百四十六話 王女と妖精
スミマセン。遅くなりました。暑さでバテ気味です。やっぱり水分補給は大事ですね。
「ごめんごめん。気持ち良すぎて寝ちゃってたよ」
僕は身を起こす。隣ではエリが椅子を起こしてパラソル立ててジュースを飲んでいる。モモとアイの方からは寝息が聞こえる。なんて言うか、僕、全く警戒されて無いな。普通、男が居るとこで、無防備に水着で爆睡できないでしょ。
「ちょうど良かったわ。多分もうじき到着よ」
この魔道船は高性能で、島まで八時間くらいで着くそうだ。もっと飛ばしたら早く着くけど、揺れが酷いそうで、速さより快適さを取った。
ん、高性能で八時間? おかしいな。島から出た時にはもっと時間がかからなかったような? あ、そういえば昼寝したからその時に流されたんだろう。高性能な魔道船より、僕が速くて泳げる訳無いし。
「ハルト、なんか欲しいもの無い? お腹空いてない?」
エリはいつもこんな感じで僕に気を掛けてくれる。サラサラな髪に白くすらっとした体。金色のビキニじゃなかったら、普通にビーチに居る可愛い女の子だ。けど、中身は腹筋でランスのチャージを受け止め、ゴーレムを素手で叩き潰す化け物だ。その化け物が島でする修行ってどんなんだろうか? 素手で島の木全てを抜きさるとか、岩場を全て砕いて砂浜にするとかだろうか? 怖くて聞けない。なんだかんだで1年過ごした島だから自然破壊は止めて欲しい。
「ねぇ、ハルト」
ビクッとしてしまう。今僕の頭の中ではエリが素手で木々をなぎ倒しまくっていた。
「な、何かなー」
「あたし、頑張る。もっともっと強くなるよ」
エリが力なく微笑む。まじか、勘弁してほしい。まだ強くなる気なのか? 島が更地になってしまう。ドラゴンの事なんか忘れて、島で1年くらい過ごせばドラゴンがどっかに行ってるんじゃと思ってたけど、エリを何とかしないとなんか事故とかで死んでしまうかもしれない。
「エリは、今のままでも十分なんじゃないかなー」
「何言ってるのよ。今のままじゃドラゴンは倒せない。ハルトのお荷物にならないために、もっと頑張らないと」
ハルトのお荷物? 僕の方がお荷物だと思うんだけど?
「今のあたしじゃ横に並ぶ事も出来ないわ。少しでも前に進まないと」
前に進んだら、僕との差が更に開くと思うんだけど。
「主様ーっ。退屈ですー」
頭の上に軽いものが乗ってくる。妖精パンドラだ。
「あの精霊、色々物事は知ってるけど、知能指数低いから話がつまんないですー」
頭をツンツンしてくる。話がつまんないとか言ってる割にはかなり話こんでたよね。
「あいつ、種族がウンディーネらしいから、言いにくいから愛称つけてやったら、口聞いてくれなくなったですー。雑魚精霊のくせに」
「ん、どういう愛称つけたの?」
「可愛いものや女の子の語尾に『こ』ってつけるじゃないですか。『ねこ』とか『きのこ』とか」
ウンディーネに『こ』?
「うんうん、それはダメだねー。ウンディーネさんも怒るよねー」
パンドラが飽きたんじゃなくて、ウンディーネがオコみたいだ。大丈夫かな? 船の進路は精霊がコントロールしてるから、変なとこに連れてかれたりしないよね。
「ちょっとーパンドラ。あたしたち大切な話してんだけど」
「大切な話? ないない。そんなのないわ。あんなクソ雑魚汚物ドラゴンすら倒せなかったブタには主様と会話する資格は無いですー」
何、パンドラ、エリを煽ってるんだろうか? 君なんかエリにかかればワンパンでザクロにされちゃうよ。
「分かったわ。見てなさいよ!」
ヤバいエリの目がギラギラしてる。
「はいはい、そういうのいいって」
更にパンドラは火に油を注ぐ。
ん、水平線に何かが?
「あっ、もうすぐ着くよ。みんな服を着て」
遠くに懐かしい島が見える。良かった。ウンディーネはちゃんと仕事してくれたらしい。それより危なかった。エリが暴れたら大海原に投げ出される事になったんじゃ?
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