第百三十九話 賢さ(エリ視点)
「あれって気付いてるのかなー」
あたしはモモとアイに問いかける。ハルトが寝たから、船室に戻って作戦会議する事にした。視界の隅で箱妖精が船の魔道具を眺めている。あの妖精は脳天気だから話を聞かれても問題ないだろう。
「普通だったら気付くと思いますよ。何もかも知ってて私たちがどうするか見極めてるんじゃないですか?」
もしかしたらそうなのかも知れない。
「そうよね。ハルトって賢さも200越えてるんでしょ。単純に人の10倍賢い訳だから普通だったら絶対気付いてるわ」
アイが言う通りだ。人の10倍賢いっていうのは本人じゃないからどんなんか分かんないけど、ハルトが賢い事は確かだと思う。細かい事や数字とか何でもずれる事なく覚えてるし。
「うー、ハルトって何考えてるのか分かんないのよねー。なんて言うか、あんたたちみたいに自己主張激しくないし、思った事言わないし」
そう、ハルトは大抵あたしたちを優先する。何が好きとか、何をやりたいとか言うのをあんまり聞いた事が無い。今回だって、トラウマな島になんだかんだでついて来てくれてるし。要は良い人なんだ。お人好し。そんな彼に彼の能力やステータスを隠してるのはなんか罪悪感を感じる。
「エリ、あんたも賢そうで何にも分かってないわね。私はこう見えて今まで苦労しっぱなしだったし、沢山の人と接してきたからいい事教えてあげるわ」
なんかアイがマウントとってくる。腰に手を当てて唇の片方上げている。本人は格好つけてる積もりだと思うけど、小柄で幼児体型な彼女がすると、子供が背伸びしてるようにしか見えない。
「何を考えてるか分からない人って、大抵何も考えてないものよ。よくクール系イケメンや美人で何考えてるか分かんない人っているじゃない、そう言う人ってあんまり苦労してないから、クールに見えるだけで、中身からっぽで何も考えて無かったりするわ。しっかり考えてる人だったら、必ずすぐに行動を起こす。私に言わせると、行動しない人って何も考えて無いのと同じよ。ハルトって何か積極的に行動した? してないでしょ。だから、何考えてるのか分からないって事は、たいした事考えて無いのよ」
アイは息つぐ事なく一気に話す。極論な気もするけど、一理あるわ。え、まだ話すの。
「数値的な賢さはただの頭の性能。どんなに頭がいい子供でも無人島で育ったりしたら言葉も話せないでしょ。だからハルトもそう。沢山の人と接したり、私みたいに沢山の本を読んだりして、人について学ばないと、それも宝の持ち腐れ。知らない事は出来ないでしょ。だから結果ハルトはフルーツとか自分の力とかは理解出来てないと思うわ。情報と比較対象が足りてないから」
そう言われると、そんな感じがしてきた。ハルトは回復魔法を一発で覚えたような怪物だけど、自分で回復魔法を発明は出来ない。インプットするものが無いとどんなに賢くても無意味って事よね。ハルトにはもっと勉強が必要って事ね。
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