第百三十五話 果実
僕は少し未練を感じながらも、モモから目を離す。こういう時にモモをたしなめてくれるエリからは、僕に隠れてモモは見えてないみたいだ。なんて言うか、セクシー要素より妖怪要素が強い。モモはその芸で一生食べていけるんじゃないだろうか?
こういう時は心のオアシスであるアイだ。僕は上にずれて頭を曲げて逆さまにアイを見る。
「ぶっ!」
つい吹き出す。良かったジュースやミルクを口にしてなくて。
「アイ、なんで、こっちに足向けてんだよ」
あろう事か、奴は僕に真っすぐ足を向けて寝てやがる。柔らかそうな足の裏と裏の間に水着の食い込みが見える。水着なのに、なんか小っちゃい女の子のパンチラ見たような罪悪感がある。
「ハルト、何見てんのよ。アンタもしかして変態?」
「違う違う。何してるのかなーって思って」
「何してるも何も日光浴よ。横向いたら、なんか変なものが視界に入るし、頭そっちだとうるさくて眠れなさそうだし、足向けるしか無いじゃない。まさかアンタが下から股間ガン見するなんて思ってないし」
変なもの? モモだろう。
「たまたまだよ」
「たまたまで、そんなキモい見かたする? て言うかいつまで見てんのよ」
僕は慌てて目を反らす。あっちが勝手にそこに寝転んでた訳なのに、なんでこんなにしかられにゃあかんのだろうか?
「ちょっと、あんたたち騒がないでよ。眠れないじゃない。せっかくウトウトしてたのに」
あ、エリ様が不機嫌っぽい。けど、エリのおかげでアイからの口撃も終わりそうだ。
「もうっ、眠たくなくなっちゃったじゃない。そうね、暇だから、フルーツの配分でも話し合っとく」
フルーツ? なんだろう? あ、島でスライムから取れるフルーツか。思い出すだけでうんざりする。島じゃフルーツばっか食べてたから今じゃ考えるだけでうんざりだ。やっぱ肉だよ肉。今回はパンドラがしこたま他の食材も入れてるから食事は充実するはずだ。
「リンゴ(力)はあたしが全部食べるわ」
いきなりのエリのリンゴ独り占め宣言。分け合おうという考えはないのか?
「はいはい、バナナ(賢さ)は私、私が全部貰うわ」
アイはバナナを独り占めするらしい。さっきの不機嫌は飛んでいってる。マジでバナナが好きなんだな。
「私はメロン(魔力)が欲しいですね」
「ダメっ!」
即座にアイがダメ出しする。
「何言ってるのよ、アンタにメロンは百年早いわ。乳豚に真珠よ。メロンは私、チェリー(MP)もね、アンタはミカン(耐久)と桃(HP)でも食べてればいいのよ、モモなだけに」
「今、さらりと私をディスりましたね。アイは一番貧弱だから桃食べるべきでしょ。私がメロンを貰います!」
「ちょっとアンタたち、良く考えなさい、自分にとって何が一番なのかを。アイにバナナ、あたしにリンゴは確定よ。で、モモは今後どういう立ち位置を目指す訳?」
フルーツに立ち位置? キャラ付けか? バナナキャラのアイみたいに、モモも何かフルーツを自分のアイデンティティにする事を求められてるのか? 女の子にとってのフルーツって重要なんだな。
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