第百三十一話 王族
「おいおい、なんで俺らが拘束されるんだ!」
なんか聞いた事があるおっさんの叫び。なんか第一王子たちが集まってるとこでひと悶着起きてるみたいだ。
「ハルト、あたしたちも無関係じゃないから行ってみよ」
駆け出すエリについていく。なんか厄介事の臭いしかしないんだけど。あの声って確かゴーレム使いのおっさんだよな。
「ルーカスとお前にはドラゴンの封印を解いた嫌疑がかかっている。悪いが疑いが晴れるまで拘束させてもらう」
第一王子が冷たく言い放つ。ゴーレム使いのおっさんと、治療されたみたくなんとか見られるようになった第二王子が後ろ手に縛られている。
「おいおい、そんな事するはずねーだろ。封印したドラゴンが強ぇのはガキでも知ってる。わざわざそんな自殺紛いの事はしねーよ」
「言い訳は後で聞く。連れて行け」
おっさんは暴れるが、無事な騎士に一撃入れられて大人しくなる。
「待てよ、アニキ」
寝っ転がってて動かなかった第二王子が顔を上げる。
「証拠はねーんだろ。俺にはあんたが王位を磐石にするために、俺を陥れるようにしてるようにしか見えないんだが」
「おい、おかしな事言うな。お前だって知ってるだろ。ドラゴンが封印されてた洞窟には王族しか入れない呪いがかかってた事を。何人も好奇心でその呪いで命を失ってきた」
「ふん。王族しか入れないから俺が容疑者? なら言わせてもらう。王族全員が容疑者だろ。それにはオメーも入ってる」
「フッ。語るに落ちたな。俺はここ数日、護衛の者と片時も離れておらぬ」
「そうかいそうかい。だがオメーの部下ならどうとでも口裏を合わせられるだろ。それに、まだいるだろ。オヤジとエリーが」
「父上は城から動けぬ。それにエリーは行方不明だろ」
父上って、王様だよな? エリーって誰なのか?
「おいおいアニキー、オメーの目は節穴かぁ? ほら、そこの仮面の女、誰かに似てねーか?」
第二王子は顎でエリを指す。この人王子だよな? なんかやさぐれ過ぎてないか?
「そこの女性がどうしたのか?」
第一王子がジロジロとエリを見る。
「はぁー」
第二王子が寝転んだままため息をつく。器用だな、この人実は元気なんじゃ?
「そこの仮面の女が俺らの妹のエリーだって言ってるんだよ」
はぁー? 何言ってるの?
「ふざけるな。エリが王女様な訳ないだろ。オークナイトのランスの突撃を腹筋で受け止め、ワンパンで昇天させる王女様がどこに居るんだよ!」
つい咄嗟に言葉が迸る。王女様っていうのは、たおやかではかなくて美しい存在だ。エリーって言うのは王女様の名前なのか。エリーとエリ。似てるのは名前だけだろう。
「そうだ。少年が言う通りだ」
兄である第一王子が言うから間違いないだろう。
「高貴な血を引く俺たちの妹と、仮面に下着のような姿でドラゴンを殴りまくる女海賊のような人と一緒にするな。温厚な俺でも我慢できんぞ」
「プッ」
誰かが吹きだした? 見るとアイの肩が笑ってる。モモは口を押さえてる。ん、エリはなんか顔が赤い。なぜだ?
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