第百二十七話 三角関係
うう、風邪ひきさんです(>_<)
「私は今目覚めました。真実の愛に。だからハルト、私を受け入れて」
イリスは顔を上げ哀願するような目で見てくる。
「何やってんだイリス。俺たちは先に帰るぞ。ハルト、体調がいい時に相手してやる。首を洗ってまっとけよ」
ジェイルはバートンに肩を借りてミレと一緒にそそくさと歩き去る。あんなに早く歩けるなら元気なんじゃないのか? モモたちはそばに座ってニコニコでこっちを見ている。見せ物じゃないよ。
「ちょっとー、なにアンタ、都合良く鞍替えしようとしてんのよ」
エリが僕とイリスの間に入る。あ、もうちょっとイリスを見てたかったのに。イリスはいつも肌露出控え目な服しか着ないから。
「鞍替えって何よ! 言ってるじゃない真実の愛って。真実の愛に目覚めたって!」
イリスが立ち上がってエリに食いかかる。
「へー、真実の愛ねー。じゃ、あんたあんたの神様にそれ誓えるの? 私はハルトに対して真実の愛に目覚めましたって」
「誓えないけど真実の愛よ」
イリスは即答する。神様には誓えない真実の愛? たしかイリスは守護してくれる神様の力を借りて癒しの力を発揮している。神様に嘘だけはNGらしい。力を失うそうだ。と言う事は、真実の愛って誓えないって事は嘘の愛?
「じゃそうねー。あんたの真実の愛を3秒以内10文字以内でいってみて。納得できたらハルトも多分考えるわ」
エリがイリスを睨む。怖ぇ。言わないと噛みつくぞ的なオーラが出てる。さすがにこれはイリスも感じてるみたいで、一瞬で顔の血の気が引いている。
「えっ、えっ、何よ唐突に?」
「3」
エリからの圧が強くなる。
「真実の愛がそんなので語れる訳ないじゃない」
「2」
やばっ。僕もついでに冷や汗かくくらいエリがイリスに殺気出してる。
「ちょっとー、そういうの私苦手なのよ」
「1」
エリの体が沈む。跳びかかる前の猛獣みたいだ。イリスが震えている。
「わかったわよー。言えばいいんでしょ。えーっと、力とお金!」
ん、真実の愛が力とお金? うわ、なんかドン引きだわ。一気になにか冷めた。みじんこくらいはあったイリスへの好意がゼロと言うかマイナスへとバンジージャンプだ。
「聞いた? ハルト。この人の真実の愛って力とお金の事なんですってー」
「それ二つとも僕には無いよね」
僕はクソ雑魚だし、お金の管理はエリがしている。
「あ、そうだ。それ二つともエリが持ってるよ。じゃイリス、エリとつき合えば?」
「「え??」」
二人が顔を見合わせる。うん、なんか気が合うみたいだしそれがいいんじゃない? なんかエリもイリスも僕の手には負えない人たちだからね。
「何言ってんのよー」
イリスが大仰な仕草で喚き始める。
「私が好きなのは男! 男がとってもとっても大好きなのよーっ!」
帰ろうとしてた冒険者や騎士たちがこっちを振り向く。パッと見は清楚系神官なのにそんな事大声で。恥ずかしくないんだろうか? 今後はビッチ認定されて、その大好きな男たちが列を成して寄って来てくれるんじゃないの?
「あたしだって、こんなの勘弁よ」
エリは心なしかイリスから遠のく。
「て言うかあんた、終わってるわね。男が大好きで、力とお金が大好きって。そんな人を好きになる人っていると思う? だってつき合ったとしてももっと力とお金持ってる人が近づいて来たら、すぐにそっちに行っちゃうって事でしょ? まさに今あんたがジェイルからハルトに鞍替えしてるように」
「それならあんただって一緒でしょ。その力だってハルトのレアアイテムなんでしょ。あんたも力と金目当てでハルトにつきまとってるだけよ。私にあってあんたに無いのは歴史よ。私はハルトとは長い事一緒にいたからお互いなんでも知ってるわ」
二人の話がヒートアップしてくる。遠巻きに見てる人達から修羅場とか寝取られとか聞こえてくるが、そんなんじゃないよ。僕は二人とも手を触れた事くらいしかないのになんでこんな事になっているんだろうか?
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