第百二十三話 宝剣
「ハーッハッハッ。獣畜生のくせに多少は知恵があるようだな」
第二王子は掲げた剣を頭上でクルクル回す。良く通る声だな。舞台役者みたいだ。
「我が手にあるは宝剣ジャイアントドラゴンスレーヤー! 幾体ものドラゴンを屠ってきた最高のつるぎだ!」
ジャイアントドラゴンスレーヤー? なんかゴテゴテした名前の剣だな。けど、第二王子はどうするつもりなんだ? 相手は上空、どんなに頑張っても剣は届かない。
「ウォオオオオーーーッ!」
第二王子は唸りながら剣をグルグル回しまくる。なんか剣が輝いてくる。剣の先に金色の光る球が生まれどんどん大きくなる。それを見てか、ドラゴンが第二王子に近づく。大きく息を吸い込み口を開けるドラゴン。ドラゴンの口から吐き出される黒煙、それと第二王子が剣を振り下ろすのは同時だった。
「食らえ! 対ドラゴンの究極魔法! ジャイアントドラゴンスレーヤー!」
剣から光の球が放たれ大きな半月形になりドラゴンに向かう。金色の光がドラゴンの黒煙を切り裂いてドラゴンに命中する。
「グギャーーーーッ!」
ドラゴンが叫ぶ。黒い鱗が弾け、胸元あたりに横一文字に赤い線が。そこから血が噴き出す。だがドラゴンは空中に浮いている。そして大きく息を吸い込み吐き出す。その先は第二王子。黒煙が通り過ぎ、消える。そこには剣を振り下ろした体勢のまま黒い塊になった第二王子と思われるもの。ドラゴンは近づくと、その場でくるりと回り尾で第二王子だったものを弾き飛ばす。そして、ドラゴンは羽ばたき再び上空へと戻る。
今のはなんだったんだ。第二王子の攻撃は確かにドラゴンを傷つけた。もしかしたらさっきの剣ならドラゴンを倒せるのかもしれない。僕は第二王子に向かって駆け出す。
「爺! アレを使え!」
今度は第一王子が叫ぶ。その声に反応してドラゴンが第一王子に首を向ける。まずい! 第一王子のそばにはエリとモモがいる。僕は咄嗟にそっちに方向転換する。第一王子に向かってゆっくりと降りてくるドラゴン。王子は両手を広げる。右手には剣。
「我が名はエクス・フォン・ミッドガルド。邪悪な竜よ。いざ尋常に勝負!」
王子は叫び、剣の切っ先をドラゴンに向ける。遠距離から届くブレスに対して剣を構えて意味があるのか? もしかして第二王子みたいに何か飛ばせるのか?
ドラゴンは王子から距離をとって息を吸い込む。そして、その口から黒煙を吐く。
消えた。
え、ドラゴンが消えた。
王子は飛んできた少量の黒煙を剣で薙ぎ払い打ち消した。
ドラゴンはどこに行ったんだ?
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