第百二十話 流れ星
「えっ、まじ、『ノヴァ』、存在したの……」
アイが呆然と呟く。迫る火の玉を見て。あれって大丈夫なのか? 僕らに被害は無いのか?
「カーッカッカッ! 滅べ滅べ燃え尽きろ。太古の時代より、人間は進化した。受けてみよ神の鉄槌!」
ジャラジャラ爺さんが狂ったかのように甲高い声を上げている。
「残るぞーっ! わしの名もここに居る。者全て。伝説、伝説になるのじゃ!」
まずい、あんなのが落ちてきて、無事で居られる訳が無い。火の玉がドラゴンに迫る。
「カーッカッカッ! 究極魔法、『ノーーーーヴァーーーーーーーー!』」
火の玉の先端がドラゴンに触れる。僕は咄嗟にアイの手を引っ張り抱き締め、ドラゴンに背を向ける。目の前にバナーヌが来る。コイツ、僕を盾にする気か。
ゴオッ!
爆音がしたと思ったら僕は吹っ飛ばされていた。僕の下にはアイ、そしてその下には潰れたバナーヌ。アイを潰さないように、僕は四つん這いでアイを爆風から守る。アイは動かない気絶してるようだ。
ゴゴゴゴゴゴコゴゴゴォオオオォーッ!
もう、音は大きい事を感じるくらいで、何の音なのかもわからない。けど、おかしい。衝撃を感じたのは最初だけだ。恐る恐る振り返り立ち上がる。目の前にには真っ赤な半円状のドームがある。ドラゴンが居たとこだ。ドラゴンよりさらに一回り大きなドーム。その中を赤いものが明暗で螺旋を描いたり不規則に動いている。焦って辺りを見渡すと、見つけた。エリもモモも無事だ。良かった。もしかして、あのドームは流れ星が落ちて来た衝撃を閉じ込めてるのか? まじか安全対策済みだったのか。それならもっと爆発の瞬間を見ていたかった。流れ星が落ちる瞬間なんかこれから見る機会は無いだろう。
「凄いわね。凄い結界」
アイがフラフラ立ち上がる。
「大丈夫か?」
「いや、ダメね。潰れちゃったからジュースにするしかないわ」
潰れた? ジュース? アイの視線の先はバナーヌ。
「違う違う。アイは大丈夫?」
「平気よ。ありがとう。信じてるから」
アイは僕を見ると少し赤くなって顔を逸らしてドームを見る。
「まあね、少し意識が飛んだだけ。凄い魔力だから。多分あの結界でもノヴァの直撃は耐えられないから、隕石が当たった瞬間に結界を張ったのね。けど、一人の魔力じゃ無理なはず。多分、ノヴァも結界も魔道具ね。ほら、杖が折れてる」
アイが指さした、爺さんの前にあった杖が折れてる。そう言えば昔ミレに聞いた事がある。魔法が込められた杖で回数制限がありリチャージできないものは、使用回数が無くなると折れるって。
パリッ。
何かが割れるような音。例えるなかたいクッキーを噛み割ったような音だ。
キィーーーーン。
耳鳴りのような音がする。
「まずいわ。壊れる! 結界が!」
パキン。
小さな音だった。また僕はアイを抱き締めドームに背中を向ける。
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