第百十五話 行軍
それからの動きは迅速だった。王子様と率いる騎士達は既に出撃出来る状態だったし、ほとんどの冒険者達は出発前でいつでも冒険に行ける状態。兵站の荷馬車を引き連れた騎士団に冒険者達がゾロゾロとついて行く。街道を通り騎士の演習場へと向かう。
王子様からの指示はシンプル。ドラゴンに対して、まずは冒険者達が突撃して、それで倒せれば良し。倒せなければその次に騎士達が突撃する。んー、これって協力と言うより、噛ませ犬とか捨て石とか肉壁って言うんじゃないのか?
「栄えある一番槍は、お前たちに譲る。その者は長く英雄として語り継がれるだろう」
とか王子様は言ってたけど、確かに語り継がれるかもしれないけど、間違い無く死んでしまうんじゃないだろうか?
てくてく歩く僕らの横には何故かジェイル達が居る。なんだかんだで僕らは歩くのが早いから、気が付いたら冒険者の先頭を歩いてた。ちなみに歩くのが遅いアイはモモにおんぶされてる。僕たちと違って普通の冒険者は完全装備してるから装備の重さ故に歩くのが遅い。ジェイルたちは流石シルバークラス。装備の重さもピカ一なはずなのに、必死に歩いて僕らについて来てる。そんな歩く事で対抗意識持たなくてもいいのに。ジェイルたちは恩賞の前借りで兵站部隊から魔石をしこたま貰っていた。それであの厄介な盾の力をチャージしている。バートンが持ってる盾にミレが1個1個魔石を押し当てると、それが溶けるように吸い込まれていく。それをずっと繰り返している。もう何個入れたか分からない。アイが言うには上質なものらしく、軽く百万ゴールド分はチャージしてるそうだ。コスパ悪すぎだろ。
そう言えば、なんか見覚えがある道だと思ってたら思い出した。この前行った迷宮の近くだ。あのゴーレム使いのおっさんどこ行ったんだろうか?
演習場に着き、空いた門をくぐり中に入る。開けた土地の奥に森がありその更に奥に山が見える。その山のここから見てる左手の一部がごっそりと抉れている。いや抉れてるんじゃなくて、木が無くなってるんだ。
ここで止まり、王子様がやってくる。
「あの木が滅びた所に奴はいる。奴は今は食事中らしい。森の木を手当たり次第口にしてるそうだ」
まじか、山の禿げてるとこはドラゴンが全部食ったのか? もしあそこ全体に木が生えてたとしたらかなりの量なんじゃないか?
冒険者達にどよめきが起こる。
「安心してくれ。あの木が無いのは、ほぼドラゴンのブレスによるものだ。第六騎士団が演習中に発見し戦闘した跡だ」
何を安心すればいいんだろう。ドラゴンヤバすぎだろ。地形変わってるじゃないか。うわ、ノリでついてくるんじゃなくてプライド捨てて逃げれば良かった。
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