第十一話 変身 (エリ視点)
「まあ、良い出来なんじゃない。水鏡で見てきてよ」
髭は自分でやって貰う事にして、あたしはハルトの髪の毛を切ってあげた。ハルトの家の前で、手頃な石に座らせてああでも無いこうでも無いってやってたら結構時間かかった。手が痛い。
今のあたしの唯一の財産であるポーチには髪を整えるための小っちゃなハサミと眉用のカミソリも入れていた。なんかマッシュルームみたいな髪型になったけど、あたしにはこれが限界だ。初めてだもん。
「ありがとう。じゃ、これ借りるね」
なんかモジモジしてる。どうしたんだろ。
「それ、あげるわよ。毎日髭剃るのよ」
あたしは眉ぞり用のカミソリはハルトにあげることにした。まあ、整えなくてもあんまり変わらないし。
ハルトは髭剃りに川に行く。その前にトイレの場所も教えてもらった。すぐ近くに小川がありそこだそうだ。天然水洗でそばに丁度良い草が自生してるそうだ。地獄。難易度高すぎるわ。ハルト1人だけだったから覆いもないけど、あとで小屋を作ってくれるそうだ。やっぱり、早くこの島から出たくなってきた。
そして、やること無いから家の奥のフルーツを種類毎に仕分けする事にした。フルーツの他にも小ビンに入ったポーションも結構な数ある。スライムからはごく稀にポーションをドロップするって聞いた事がある。けど、それよりアンブロシアがドロップしてるって言うのは明らかに異常だ。ハルトのスキルによるものだろう。
けど、どうしよう。ハルトのステータスの事、話すべきなのか。まあ、詳細鑑定の事を知ってる人は少ないからハルトも知らないと思う。黙っとく事にしよう。別に騙してる訳じゃないし。
「エリ、お待たせ」
ハルトが帰って来た。え、童顔。髭剃ったらめっちゃ若いじゃないの。しかも整ってる。体のラインを隠して化粧したら女の子って言ってもばれないんじゃ?
「そっちの方がいいわよ。毎朝剃りなさいよ」
「いや、これ返すよ。エリは、その、使うんじゃないの?」
「元々整ってるから、あまり使わないからいいわ」
ん、ハルトの顔が赤い。
「と、整ってるって言っても生えてくるんじゃ……」
あ、そういえば、言って無かった、これって間違いなく勘違いされてる。
「それ、眉ぞり用よ」
「眉ぞり? そうだョねー」
何勘違いしてるのよ。全く……
若返ったハルトは、あたしに見せたいものがあるって事で、また居なくなった。暇だからまたフルーツ整理に精を出す。絶対に全部食べちゃうわ!
「エリ、大丈夫? 疲れてない?」
ハルトに連れられて木々に囲まれた坂を登る。
「大丈夫、平気よ」
あたしはレベル20だけど、そこまで運動してきた訳じゃないから結構しんどい。なんだかんだで今日は色々あったから。そして、開けた所に出る。あたしは、見える景色の素晴らしさに息を飲む。
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