第百五話 再加入
「おう、ハルト。また雇ってやる。有り難く思うんだな」
ギルドで受付待ちの列に並んでる僕に男が馴れ馴れししく肩を組んできた。
迷宮から帰り、疲れてたので一泊して、ギルドに来たら、丁度忙しい時間で受付はかなり人が並んでいた。効率重視で二組に分かれて並んでたとこだ。
やけにデカい声、誰かはすぐ分かった。
ジェイルだ……
僕を追放した前のパーティーのリーダーだ。鼻を突く臭気。うわ、真っ昼間っからしこたま酒飲んでるな。僕は列から離れさせられる。
「じゃ、直ぐに王都に行くぞ」
ジェイルは僕から離れると歩き始める。近くのテーブルで立ち上がった者が僕に向かってリュックを投げてくる。僕は咄嗟に受け取る。慣れてる事なので、僕は四つの荷物を綺麗に重ねてキャッチする。落としたら問答無用で殴られるんだよな。
ジェイルに続いてミレとイリスが出口に向かう。見慣れた光景だ。
ゴツン!
頭に軽い痛み。バートンのゲンコツだ。
「さっさと行くぞ。この愚図が」
僕はフラフラとジェイルの背を追っかける。つい、昔の癖で体が動いたが、僕は何をやってるんだ。僕には新しい仲間がいる。こいつらが僕を追い出したんじゃないか。しかも下手したら死んでた。なのになんでまた僕が荷物を持たないといけないんだ?
「ハルトッ! 何してんのよ」
エリの言葉で我に帰る。僕とエリは貸与品の返却窓口に並んでいて、他のみんなは離れた買い取り窓口に並んでたんだった。
ふと、頭に考えが過る。エリたちには僕は居なくてもいいんじゃないか? 弱いし、何も出来ないし迷惑ばっかりかけている。このままパーティーのお荷物になるより、ジェイルたちの雑用をしてる方が僕にはお似合いなんじゃないだろうか? 確かにジェイルたちがした事を考えるだけで、目眩がするほど腹が立つ。けど、エリたちのためにはそれをグッとこらえてここで離れる方がいいだろう。
「エリ、じゃ……」
僕はイライラして出口で待ってるジェイルたちの方に向かう。けど、僕の手に強い力が加わり前には進めない。
「『じゃ』じゃ無いでしょ。何言ってるのよハルト。あたしたちを置いて行かないで。アイツらには散々な目に会わされたんでしょ」
振り返ると、エリの仮面の奥の澄んだ瞳が僕を見据える。
「ちょっと、あなた、何、私のハルトの手を握ってるのよ」
イリスが顔を真っ赤にして駆けてくる。私のハルト?