第百三話 妖精
「勇者様はおこがましすぎるよ。僕なんかレベル5だから。お世辞にしても言い過ぎだよ。で、ちなみに主様って、主人の事だよね。なんで僕が君の主人なの?」
ふわふわ浮いてる妖精に話しかける。可愛い。もって帰りたい。なんか小さな女の子たちが可愛い人形が好きな気持ちが分かる。こんな可愛いくて綺麗で小っこいものって独占欲が湧くもんなんだな。ずっと部屋にでも飾って見ていたい。ん、これって危ない考えかな?
「それはですね。私に初めて触れた方が主様です。私は顕現するにあたりまして、触った方の力を吸い取って自らの力を固定しております。ですから弱い者が触れたら私は弱くなっておりました。良かったです。もし私にそこのメスブタ共が触れておりましたら、意思も力も無い只の箱として顕現してしまうとこでした」
ん、と言う事はこの妖精、僕の力で発生したって事? けど、なんか『メスブタ』とか言ってたような? 口悪すぎだろ。女の子に『ブタ』は禁句だ。3人は顔を赤くして震えている。怒りが振り切れて言葉も出ない状態なのでは。まずい。ここは仲裁しないと。妖精とエリたちの血みどろなバトルが勃発しそうだ。
「パンドラ、ちゃんだったよね。だめだよ人を侮辱するような事を言ったら。彼女たちは僕の仲間なんだから」
「侮辱? 何を、おっしゃられてるんですか? 私にとって主様以外はみんなブタのようなものです。生き物として扱って貰ってるだけで感謝すべきです」
そう言って妖精は女の子たちを冷たい視線でなめ回すように見る。3人、特にエリは今にも妖精に飛びかかって来そうだ。どうにかしないと。多分、妖精なんかエリに捕まった途端に潰れたザクロみたいになっちまう。
「仲間……嘘ではないのですか? 主様に比べたら、そこのブタ共はゴミくずじゃないですか。そこの派手顔はまだマシだとしても、そのまな板と牛ちち豚はゴブリン並みの雑魚ですよね。それで仲間だなんておこがましい。主様に寄生でもしてるんでしょう」
「派手顔……」
「まな板……」
「牛ちち豚……」
まずい! 振り切れる。どうでもいいけど、モモの悪口だけハイレベルのような。『牛ちち豚』、牛なのか? 豚なのか? いかん、笑っちゃダメだ。
地獄の底から聞こえるような低い声がエリの口から。
「ハルト、それは魔物よ。多分サキュバス」
ん、確かサキュバスって男の精気を吸い取る魔物?
「そこの魔物にハルトのHPもMPもごっそり吸い取られてるわ。ハルト、その害獣からあたしが守るわ! とりあえずぶっ殺す! あたしの顔は派手じゃないわ。みんなが地味なだけよ!」
僕の心配より、最後の言葉が本音だろう。みんなが地味って中々世界を敵に回す言葉だと思う。
エリを真ん中にモモとアイが妖精を囲む。
「みんな落ち着いて。僕がしっかり話すから。それにパンドラも言ってただろ。多分、僕の以外の人みんなに対してこんな感じなんだよ」
「ま、ハルトがそう言うなら少しだけ時間あげるわ」
「謝るなら、私は許してもいいです」
「あんただって対して大っきくないじゃないのよ」
「妖精だからいいんですー。私はまだ子供だから将来があるんですー」
アイと妖精、どうでもいいけど、属性が近いな。
「はいはい、パンドラちゃん、ちょっとこっちに来てね」
そして、僕はパンドラを隅に呼んで、みんなが大切な仲間だと言うことを納得するまで語り続けた。
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