第百二話 変身
「有名になった妖精箱ってもっとなんて言うかデフォルメされたのだったわよね」
アイが箱の艶めかしい足を凝視してる。もしかしてアイも足マニアなのか?
「なんか、例の奴は小っこい手足がついてて可愛らしかったのに、なんか汚い箱から人間みたいな足がでてると気持ち悪いわね」
アイの言葉に箱が軽く地団駄する。なかなか感情表現豊かな箱だな。僕的にはアイのバナーヌの方が不気味と思うけど。
とりあえず、エリに頼まれた事を。
「エリの剣を入れてくれないか?」
箱は肯くと、口を開ける。ん、箱の底が見えない。中は真っ暗で何も見えない。エリが剣を突っ込む。するすると入り、エリが手を放すと消えた。もしかして僕が背負ってる大量の荷物も入るんじゃ?
「これも入るの?」
箱は肯く。僕は荷物を降ろして解体して箱の口に入れていく。入る入る。こりゃすげーや。
「凄いわね。破格の内容量ね」
アイが覗き込む。モモも浮上して上から見てる。
「もしかして、私も入れますか?」
モモの言葉に箱はブンブン横に体を振る。やっぱりこの手ののあるあるで生物は入れないんだろうか?
「けどさ、どうやって出すの?」
「例のものは言ったら出してくれてたわよ」
そうか、言えば出してくれるのか。例えば袋に入ってた物の中身だけとか出せるんだろうか?
「モモの下着を出して」
袋に入ってた物と言えば、戦利品と肉と女の子たちの下着。戦利品は何があったか咄嗟に思い浮かばなかったし、血塗れの肉もやだ。
ふぁさっ。
箱が下を向いて2つの布を吐き出し地面に落ちる前に足で器用に両方蹴ってモモにぶつける。モモはそれを大事そうに受け止める。
「ちょっ、馬鹿箱、雑過ぎるでしょ。私の下着はオーダーメイドだから他のみんなの倍以上するんですよ。それになんでハルト下着なんですか?」
「ごめんごめん、袋の中身も出せるのかと思って」
それから色々出し入れしたけど、箱は僕の言う事しか聞かない。便利だけど不便だな。
そして、帰ろうと思うけど、難題が。街中を艶めかしい足が生えた箱を持って帰るのは目立ち過ぎる。たしかこれの類似品が一億で売れたとか言ってたしなー。箱に頼んだら足を消せると思うけど、ボロっちい箱を抱えて歩くのもなんか不自然だ。バナーヌは召喚送還できるから問題無いんだけど。
「お前、目立ち過ぎるよね。なんとかならないの?」
ダメ元で箱に話しかけてみる。言葉は理解出来てるからなんとかしてくれるかも?
「ハルト、何箱なんかに話しかけてるのよ。箱がなんとか出来る訳無いじゃない」
エリの言葉に箱がぷるぷるしてる。箱オコだ。箱オコ、語呂がいいな。
ん、ぷるぷるしてる箱が光る。そして箱がその場でクルクル回り始める。怒り過ぎて壊れたか? そして箱の口が開きそこから出てきた光る霧みたいなものが箱の全身を覆う。その霧が密集したと思ったら、そこには小っちゃな女の子が浮かんでいた。手のひらサイズで蝶々のような透明な羽。羽ばたく度に光の粉が舞い散る。あ、妖精だ。初めて見た。可愛いし綺麗だ。
「私の名前はパンドラ。勇者様、力をいただきありがとうございます。日に陰にこの身朽ちるまで主様のため全てを捧げます。今後ともよろしくお願いします」
妖精は恭しく頭を下げる。勇者様? 主様?
読んでいただきありがとうございます。
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