第百一話 妖精箱
「冗談だよ。もしかして、箱がついてきた? そんな訳無いよね。誰かが持って来て置いてったのかなー」
考えても答えは出ない。誰かが持ってきたなら、なんのために?
「な、なにこれ。やっぱりハルトね……」
エリが目を見開いて黙り込む。もしかして箱を鑑定したのか?
「え、どういう事?」
箱に何かあったんだろうか?
「箱が本体だったって事よ。あとは自分で調べてみて。ハルトが所有者みたいだから。あーあ、あたしが開ければ良かった。あたしは罠で、ハルトは当たり。なんか不条理を感じるわ。まさか木箱が当たりとは思わないでしょ」
なんかエリがしょげてる。
「……日頃の行い……」
アイがボソリと追撃する。エリは怒る気力も無いみたいだ。けど、エリが開けた宝箱にはギフトボックスが入ってて高性能な下着を手に入れた訳で、それと比べて凹む程の素晴らしいものなのか? このボロっちい箱が? けど、どうやって箱がここまで来たんだろうか? エリが鑑定したのなら、危険は無いだろう。僕は宝箱に近づく。
「どうやって、ここまで来たんだ? 足がある訳じゃないし」
僕の独り言が終わるや否や、箱が浮き上がる。箱の下から何か生えてる。足? 二本の足。白くてスラッとしてる生足。足の爪にはペティキュア。なんかデジャブ。バナーヌが頭を過る。毛は生えてなくツルツルしてるから女性の足だ。膝の下の綺麗さからみて二十歳以下の女性だな。自慢ではないが、僕は女性の足を見てだいたいの年齢が分かる。女性の年齢は膝下に出る。個人的にはもう少しふっくらとした二十歳から三十路くらいの足の方が好みだけど、若い足も悪くは無い。まあ、僕は常識人なので、この手の話は人前、特に女性の前ではしないようにしている。ドン引きされたり、怒られたりするからね。
けど、なんで箱から足が? これで歩いて来たって事だと思う。どうでもいいけど、ほとんど足音がしなかった。かなり高いレベルの忍び足してきたって事だよな。
箱の中に人が隠れてて足が出てるのかもって思って中を覗き込むけど空っぽだ。なんかのマジックみたいだなー。箱から魅力的な足が伸びてるのはシュールと言うより悪夢みたいだ。バナーヌといい、最近こういうファッションが流行ってるのか?
エリが近づいて来て、箱の中に腰から外した剣の柄を向ける。箱の口がバクンと閉じる。
「剣、邪魔だから入れといてよ。ハルト、箱に命令してよ」
ん、どう見てもこの箱にエリの剣はつかえるよ。命令? という事はこの箱は生きてるのか? アイもモモも箱に何もツッコまないけど、もしかして、足が生えた箱って一般常識な生き物なのか?
「エリ、ハルト分かって無いみたいよ」
アイが助け船出してくれる。分かる訳が無い。
「そっかー。ハルト、島に居たんだったわね。半年くらい前に見つかった歩く妖精箱ってめっちゃ流行ったからね。妖精箱からよね。妖精箱って中に色んなものが沢山入る箱で、ごく稀に迷宮でドロップするの。その中でも見つかった自走式の妖精箱はオークションで億を超えて話題になったのよ」
えっ。という事は僕らは歩くアイテムボックスを手に入れたって事なのか? もしかしてこれで僕らの冒険はかなり楽になるんじゃ?
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