第一話 追放
新作です。頑張りますので、よろしくお願いします。
「ハルトお前は追放だ。役立たずの能なし野郎! さっさと消えろ! このグズがっ!」
ジェイルが唐突に立ち上がって口を開く。うわ、船が揺れるだろ。と思った時には僕は激痛に体を折り曲げる。蹴りやがった。息が出来ない。こみ上げてきた何かが口から溢れそうだ。僕の頭を誰かが無理矢理髪の毛を掴んで引き上げる。
「おいおい、訳分かんないって顔してるぜ。もっと分かり易く言ってやる」
バートンが顔を近づけてくる。
「俺らは結構稼いだ。何もやってねーお前に金払うのがヤになったんだわ」
確かに僕は大して役には立ってないかも知れない。けど、僕らが稼げているのは僕のスキル『ドロップ率アップ』が関わっているはず?
「ウガッ!」
僕の顔に激痛が走る。バートンが頭突きしやがった。掴まれた髪の毛が何本も抜ける。くそっ。痛ぇ。顔を押さえて舟底に蹲る。
「グワガッ!」
頭が上から押さえつけられて床に顔が押し付けられる。
「アンタキモいのよ」
この声はミレ。もしかしてミレに頭を踏みつけられてるのか? なんでいきなり僕がこんな目に?
「こんな汚物、早く捨てちまいなよ。見てるだけでムカつく」
イリスの声がしたと思ったら、僕の体が浮き上がる。手と足をだれかに掴まれてる。ジェイルが手、バートンが足を掴んで僕を持ち上げている。必死に抵抗するが、僕の力じゃ彼らには敵わない。僕の体が大きく揺さぶられる。
「じゃいくぜ、せーの」
顔を上げるとジェイルが笑ってるのが見える。
「発射」
僕の体が宙に投げ出される。
バッシャーーーーン。
大きな水音と共に僕は水の中に沈む。服が邪魔で動きにくい、それにさっき蹴られたお腹がまだ痛い、けど、浮き上がらないと死んでしまう。水をかき分け首を水面に出す。船はまだ近くにある。
「頼む。助けてくれ! 何でもする」
四人はこっちを見て笑ってる。
「ドジだな。船から落ちるなんて」
ジェイルが僕を指差して笑っている。
「落ちたんじゃないだろ!」
「いいや、落ちたんだ。お前のようなクズが何を言っても誰も信じない」
腹が立つが、なんとかして助けて貰わないと。
「分かった。なんでもするから助けてくれ!」
「ほう、なんでもするのか?」
バートンとは付き合いが長い。多分、これは冗談だろう。
「じゃ、溺れて死ね。お前の金は俺らが有意義に使ってやるから安心して死ね!」
何言ってるんだ冗談だろ?
「ねぇ、あんなのほっといて早く帰りましょー」
イリスがジェイルの腕に抱きついている。イリスは僕の事を好きって言ってたのに、全部嘘だったのか?
僕は全力で泳いで船を目指す。
「あらあら、しぶといわねー。しつこい男は嫌われるわよー」
ミレは杖を手にしている。えっ、もしかして、僕に向かって魔法を放つのか?
「ウォーターボール」
杖から放たれた水の玉が僕の顔に命中する。沢山の水が口に入り、僕は海の中に沈んで行った。
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。