表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニコニコショップのアルバイトたち  作者: 円寺える


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/95

第28話

 閉店時間が近づくと、客は一人も来なくなった。

 制服姿は消え、目の前を通る客も減った。

 他の店から時折聞こえていた「いらっしゃいませー、どうぞ、ご覧くださいませー」という、接客鳥の鳴き声も消えていた。

 それでも閉店時間までは一時間残っている。


 インツタのフォロワーが増えたか、如月の写真にどのくらいいいねが付いたか、気にならないこともないが、ポケットから携帯を取り出すことが億劫になった千奈津は、売れない商品に埃が積もらないよう、無造作に動かす。


 斉藤もインツタを開こうとは思わないようで、レジの周りをうろついていた。


「そういえば、如月くんはさっきパソコンで何してたの?」


 手を止めず、千奈津は傍を通りかかった如月に問う。


「あぁ、イヤリングとトートバックの売上が知りたくて見てたんだよ」

「売上? どうだった?」

「イヤリングは今年と去年合わせて零、トートバックは合わせて五個売れてた」

「うわぁ、人気なさすぎ」


 失笑ものである。

 乾いた笑いをしていると、斉藤がそのイヤリングを親指と人差し指で持ち上げた。


「これ、そんなに売れてなかったんですね。トートバックの方が売れてないと思いました」

「あ、それ私も思った。イヤリングの方が可愛いよね」

「金額の問題ですかね。トートバックの方が随分と安いですから」

「でも、そのトートバックに金を出してまで欲しいとも思わないけど」

「だから二年間で五個しか売れないんでしょうね」


 しかし、そうなると千奈津と斉藤に疑問が浮かぶ。


「本部に送らないの? 売れない商品なんて、要らないよね?」

「二年間で一個も売れないなら、置いておく意味ないですもんね」


 疑問符を頭の上に乗せる二人を見て、それが当然の反応だよな、と如月は安堵した。

 自分が仕事熱心になったのかと思ったが、要らないものを売り場に置くという無意味なことに疑問を持つのは当たり前だ。


「あ、分かった。配達料ケチってるんじゃない? 本部に送るのもお金かかるからさ」

「配送料なんてたかが知れてるじゃないですか。売れないものを長期間置くよりは、売れるものを置いて売上を伸ばす方が利益出ると思いますよ」

「そっかぁ。え、じゃあどういうことだろう?」


 二人は理由が分からず、如月に視線をやる。


「いや、俺も分からないよ」


 千奈津は「なぁんだ」とがっかりした様子で肩をすくめた。「俺は店長じゃないし」と千奈津を軽く睨む。


「何か気になるね。他店舗の売上、訊いてみる?」


 千奈津は電話を持ち、二人に訊ねた。

 斉藤と如月は止めることをせず、どちらでもいいと言わんばかりの表情をした。


「めちゃめちゃ気になるってわけじゃないけど、どうせ他店舗も暇だろうし、ちょっと訊いてみるね」


 マネージャーに訊いても、教えてくれないだろう。

 どうしてバイトの質問に答えるために、自分が調べないといけないのか。そんなことを遠回しに言いそうだったので、直接他店舗に訊ねることにした。

 一番近い店舗に電話をかけると、女性が出た。


「売ってる商品って、店舗ごとに少し違いますよね?」


 千奈津が電話をしている間、斉藤は如月と話の続きをする。


「若干違うけど、ほとんど同じだろうね。ただ、店舗の規模が違い過ぎると、商品の種類に差があるよ」

「重森さんが電話しているところは、うちと同じくらいでしたっけ?」

「うん。そこもモールの中にある店舗だからね」

「他店舗に行くことないから、規模とかあんまり分からないです」

「俺も行かないから詳しくはないよ。休日に職場へ行くようなものだしね、他店舗に足を踏み入れたことはない」


 一番近い店舗といっても、加茂ノ橋店の最寄駅から十駅離れている。

 そんな離れたところのニコニコショップに行く機会はない。


 千奈津の「ありがとうございました。失礼します」という言葉で会話を切り上げる。


「どうでした?」

「イヤリングは置いてるらしいけど、トートバックはないって。イヤリングの売上は、去年一個売れたけど、今年はまだ零ってさ」

「そうですか。まあ、今年はまだまだありますし、これから売れるのかもしれないですね」

「ちなみに一昨年は零だって」

「僕の小さなフォローを返してほしいです」

「つまり、このイヤリングは正真正銘の不人気商品ってことだね」


 不人気なのはわかった。

 その不人気商品が、一体何故売り場にあるのか。


「あっちの店舗は置いてる理由、何か言ってた?」

「ううん、何も。本部からもマネージャーからも指示がないらしいよ。自分たちから、これどうしますかって言い出す程のやる気はなさそうだったし」

「それはうちと一緒なんだ」


 何の指示もないというのは変な話だ。

 本部もマネージャーも、売上は知っているのに何も言わない。


「なんか気になってきたね。商品を詳しく調べてみる?」


 如月はパソコンを開き、イヤリングの詳細データを取り出した。

 二人は横から画面を覗く。

 商品名や発売日などが記載されており、見ただけでは分からない。

 そもそも詳細データを開いたことすらなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ