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ニコニコショップのアルバイトたち  作者: 円寺える


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第23話

 千奈津、波瀬、斉藤の三人体制で、良い化学反応は起こらない。それは千奈津が前から思っていたことである。

 波瀬の言いたい放題に千奈津は苛つきながらも怒ることはしない。人間関係は良好な方がいいからだ。下手に波瀬を刺激して、面倒事になるのは嫌だった。波瀬が千奈津にガミガミと口煩くしているのを、斉藤は見えていない聞こえていない振りでやり過ごす。波瀬は斉藤の知らない振りを本気に受け取っているので、千奈津への当たりを、斉藤は知らないものだと思っている。

 そんな三人が一緒にいたところで、楽しくなるはずがない。


 十六時になると、斉藤と波瀬が出勤した。


「お疲れ様です」


 斉藤が千奈津に挨拶をし、隣に立った。

 波瀬は携帯を片手に、パシャパシャと店内を撮り始めた。

 出勤してすぐにやることでもないだろうに、商品を整えながら写真を撮っている。


「重森さん、覚悟した方がいいですよ」


 こそっと斉藤が耳打ちをする。

 何のことか分からない千奈津は首を傾げた。


「さっきあの女に、昨日の投稿は誰の提案なの? って聞かれました」

「えっ」


 昨日、海老原を撮ろうと言い出したのは千奈津である。


「流れでそうなっただけで、誰が言い出したとかじゃなかった気がする。みたいなことを言ったら、じゃあ誰が海老原を撮ったのかっていう話になって、重森さんの名前を出してしまいました」

「まあ、撮ったのは私だからね。言い出したのも私だし」

「重森さんが言い出しました、って言ったら面倒なことになると思ったんです」

「庇ってくれたの?」

「庇うというか……面倒なことになるかなと思ったので」


 そっぽを向いてぼそぼそ喋る斉藤が可愛い。

 結局千奈津の名前を出すことになったが、庇おうとしてくれたのは素直に嬉しい。


「なので多分、昨日の投稿のことで何か言われるんじゃないかなと危惧しています」

「でも別に、指摘されるようなことしてないよね」

「昨日の投稿のいいね数見ました?」

「あ、見てない。まさか」

「御覧ください」


 斉藤がスマホを取り出して海老原が写っている投稿のいいね欄を画面に出す。

 千奈津は「まさか」と言いながら画面を覗くと、二桁の数字にごくりと喉を鳴らした。


「そしてこちらが、あの女です」


 波瀬が写っている投稿のいいね欄は、一桁だった。

 千奈津の一票は見事生きたのだった。


「あの女が投稿した中で、この投稿が一番いいね数多いです」

「なるほど。惨敗したのね」

「はい。ちなみに、フォロワーが四十人を越えました」

「へえ! 海老原くん効果かな」

「そうでしょうね。そろそろ五十人に到達しそうです」


 写真を撮っている波瀬は、海老原にいいね数を越えられたので拗ねているのだろうか。

 そしてその海老原を撮影した千奈津に怒りを抱いているのではないか。

 今日はまだ波瀬と目が合っていないので、どんな感情を持っているのか不明だが、良いものではないのは確かだ。

 なんてったって、いいね数で惨敗したのだから。波瀬の心中は穏やかでない。


「重森さん」


 いつの間にか波瀬が目の前に立っており、千奈津を見据える。

 そらきた。この場から離れようかな。斉藤は考え、その場に留まった。


「昨日の投稿、重森さんが撮ったらしいですね」

「え、うん」

「どうして太月くんを撮ったんですか?」

「海老原くんを撮った理由…...?」

「太月くんが自分から撮ってほしいって言ったんですか?」


 普段よりも声色が柔らかいのは、斉藤が傍にいるからだろう。

 波瀬はこてんと首を傾げる。

 そんな素振り、いつもはしないくせに。


「撮ってほしいというか、波瀬さんが投稿してたから私たちも投稿しようかなって」

「あたしのせいですか?」

「いや、ノリというか」

「ノリでSNSのお仕事してるんですか?」


 あぁ、面倒くさい。


「斉藤くん、向こうの女子高生たちにインツタの説明をお願い」


 波瀬が斉藤にそう言うと、斉藤は「その必要ないと思うけど」と眉を寄せた。千奈津は「行ってきなよ」と、斉藤をその場から離した。

 斉藤が緩和剤であったが、二人の攻防を聞かされるのも辛いだろうと、千奈津は気遣った。


「インツタは誰かが管理するべきだと思うんです」

「管理?」

「皆が投稿をしてしまうと、投稿欄がいっぱいになって、わちゃわちゃするので管理する人が必要だと思います」

「はぁ」

「今の話を聞いた感じでは、重森さんは管理者に向いてないと思うんです」

「そ、そう」

「だから、今後は勝手に投稿するのを控えてくれませんか?」


 お前が言うな。

 千奈津は突っ込みたくなったが、ぐっと言葉を呑み込んだ。

 きっと波瀬は自分こそが管理するべきだと思い込んでいる。

 インツタの管理が必要なのか疑問だが、まとめ役として一人いてもいいかもしれない。

 ここで、「うん分かった」なんて言えば、「管理はあたしがしようと思います」という流れになるだろう。

 波瀬に任せても上手くいくとは思えない。波瀬の投稿を見れば明らかだ。

 千奈津はそこまで仕事に対して情熱があるわけではない。インツタが失敗しようが、どうでもいい。勝手に投稿するなと言われて「嫌だ!私も投稿したい!」と反発するくらいの熱量をインツタに対して抱いていない。

 どうでもいい。

 だが、波瀬が好き勝手するのは嫌だ。波瀬の思い通りにいくのが嫌だ。


「じゃあ、如月くんに管理をお願いしようか」


 名案だ、とでも言わんばかりの笑顔で波瀬に言い放った。

 波瀬は瞬きを数回繰り返し、顔を顰めた。


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