不良
一時間目の終わりを告げるチャイムが鳴り、授業が終わった。
(そういえば、あいつ、今日もいないのか。)
僕の前の席を見ながら思っていると、隣の水谷の席に水谷と話したかったのか、クラスメイトがたくさんいるが水谷の姿はない。
(そういえば、ホームルームが終わった後もいなかったなー。)
そんなことをぼんやりと思いながら読みかけの本に視線を戻した。それから、水谷が教室に帰って来たのは、もうみんなが席についている、チャイムが鳴った後だった。それが他の休み時間にも続き、もう昼休みになったがみんな水谷に話せないでいる。
(そんな誰一人も話せていない奴を学校案内なんて先が重いやられる。)
そんなことを思いながら、弁当を持ち、立ち入り禁止の階段を登り、ドアを開けた。
(空が綺麗だなー)
とぼんやり思っていると
「竜青ー、今日もきたのか」
「ああ、屋上で食べようと思って」
「ふーん、そっかー」
とへらへらしながら言った。こいつは、今年の夏に転校してきた、僕の唯一の友達の神沢拓人だ。顔がすごく整っているが、髪が金髪だからか、いつもへらへらして何を考えているか分からないのか、みんなは拓人と最低限のことしか話さない。
そんな拓人との出会いは
僕が不良に絡まれていた時、助けてくれたのが最初の出会いだ。10人相手に怯まず、立ち向かう拓人が僕は強く、かっこいいと思った。そして拓人がこの学校に転校してきて、話すようになり、よく屋上で昼食を食べるようになった。
「そういえば、今日、クラスに転校生がきたんだよな。」
「ふーん。だから、みんないつもより騒がしかったのかー。それにしても、秋に転校って中途半端だなー」
(いや、おまえの夏に転校もどうかと思うけど)
「そういえば、拓人。午後の授業は受けるのか?」
「うーん、久しぶりに受けようかなー。転校生のことも気になるし。」
拓人がそう言った時、昼休みの終わりを知らせるチャイムがなり
「やべ、急ぐぞ。拓人。」
2人で教室まで全力で走ったが、間に合わず
「二人とも、放課後居残り」
「竜青ー、居残りだけどさー、転校生の学校案内どうすんの?」
授業が終わり、帰る準備をしていると拓人が僕に言ってきた。
(そういえば、どうなるんだ。)
そう思っていると、
「他の人がしてくれる…」
と隣の席の水谷が言った。まさか話してくるなんて思わず、一瞬誰が言ったのか分からなかった。クラスのみんなも水谷が話しかけたことに驚いたのか、水谷の方を見ている。だが、拓人は動じることもなく、
「そっかー。じゃー竜青、今日一緒に帰ろー。」
と言い、それに僕は
「お、おう」
としかいえないぐらい、水谷が話しかけてきたことに驚いていた。
「おまえら、授業の始まる前に席に着席しろと何回言えばわかるんだ。特に神沢、お前午前は授業をサボってなにをしていた!?」
先生の声がこの小さな学習室ではよく響く。怒られる時は学習室が学校では定番になっている。だが、そんな学習室に入るのは普通に学校生活を送っていたら入ることは無いだろう。特例を除いて……隣を見た。
(やっぱ、拓人はある意味、特例だな。)
そう思っていたら、
「おい、片山聞いてんのか」
と先生に言われ、とっさに
「はい、聞いています。」
「なら、いいが、次は授業に遅れないように」
そう先生が言い、学習室を出て行った。
その瞬間やっと終わったと思い、思わずため息を吐いた。そして、隣で寝ていた拓人が起きて、
「やっと終わったー。あの先生、話長いから寝ちゃうんだよなー。」
(やっぱり寝てたのか。先生にばれていたら後1時間増やされていたな)
と呑気に考えていると、拓人が
「俺も相当やばいけど、竜青もやばいよな」
と独り言のように言い、思わず
「何が?」
と聞いてしまったが、
「無自覚はもっとやばい。竜青帰ろー」
と笑いながら言った。結局、拓人が何を言っているか分からなかったが、この話は終り、家に帰った。