⑥
「それじゃあ説明を始めるけど矢瀬君は何処まで
知っているのかな?」
暫く経ってから斎藤が話を切り出す
「私達が魔女って事しか教えてないよ、ね?」
「えっ⁉︎ああ、それだけです」
説明を聞くだけで良いと思っていたので、
芽依から唐突に話を振られ焦って答える。
「何処から話せば良いかなぁ・・・」
斎藤が腕を組み、頭を悩ませる。
「所属から順に話すのが妥当だと思うけど」
少女が提案に斎藤と芽依が納得している。
ふと奏は会話に入ってこない朱音が気になり
正面に座っている朱音を見ると黙々と
お茶菓子を食べていた。
「なに?あんたも食べる?」
奏の視線に気付き、菓子器から個包装された
マドレーヌを取り、渡してくれる
「いや、今は遠慮しておく」
「食べないと無くなるわよ?」
説明される者として食べながら聞くのは失礼だと思い、
首を横に振り断る。
朱音は手に取った菓子の包みを開け口に運ぶ。
というか朱音以外誰も菓子に手を出していないので
気にはなっているが手が出しづらい。
今食べているので4個目になり、開けられた袋は
カップの近くに散らばっている。
「矢瀬君、良いかな?」
「あっ、はい大丈夫です」
話が終わったら1個頂こうと考えていたら斎藤から声を
掛けられ慌てて返事をする。
「まず私たちは聖架教団って言う特別な力、
魔力って言うんだけどね、その魔力を持った人が
集まる教団に所属しています。
目的は主に魔道士や怪異から人々を守ること。
で、君を襲ったのは自動人形と言ってね、
作った使い魔だろうね」
此処までは良いかな、と斎藤は聞いてくれる。
確かに何も無しに火を出したり、傷を治すのは
特別な力だなと納得するが
「魔道士って何です?後そんなのに
襲われた理由が知りたいです。」
浮かんだ疑問をぶつける
「魔道士というのは私達みたいに力を持っている
人間でね、目的や益の為なら平気で人を傷付ける、
人の道を外れた連中の事をそう呼んでいる。
君が襲われた理由は君にも魔力が宿っているから
だろうね」
思わず首を傾げてしまう。
今まで特別な力なんて扱った事などないし、感じた事もない
「自覚は無さそうだが朱音の忘却魔法を弾いたと聞いたよ、それだけで十分に素質が有る」
「そうなの?」
朱音に目を向ける。
「そうよ、目を閉じて受け入れたと
思ったのに抵抗されてむかついたわ」
朱音が怒っていた理由がやっと分かった。
だが抵抗したくてした訳では無いので
怒られたのは理不尽だと感じた。
「恐らく今まで眠っていた力が今回襲われた事で
目覚めたんだろうね。それで、君には力の使い方を
覚えて貰いたいと思っている」
斎藤が話を続ける
「戦えって事ですか?」
襲って来た人形を思い出し怖気が走る
あんなのと対峙するのは是っきりにしたい。
「あくまで自衛手段を身に付けて欲しいってだけだよ。
今回は間に合ったけど、これから先も助けれる保証は
無いからね」
これから先も危険な目に遭うのはほぼ確定らしい。
思わず溜息が出る。
「魔道士には魔力を持った人を殺して実験の材料にする者もいるし、人を喰う怪異も魔力が多い人を優先的に狙う事が
多いんだ」
斎藤が言いたい事を纏めると周りの人よりも
質の良いモルモットか餌らしい。
更には身を守る術が無いので危険に遭遇した場合、
助けが来なければ死は免れない。
戦わずに殺されるか、戦って生き残るか
誰だって同じ選択をするだろう。
「そんな理由で殺されるのは御免です。力の使い方を
教えて下さい」
斎藤の目を真っ直ぐ見て答えるり
恐怖は有るが人として真っ当な死に方を迎える為には
仕方のない事だと飲み込む。
「了解、教えれる事は全て教えるよ」
答えを聞いた斎藤が満足そうな顔をして頷く。
「それじゃあ私は準備して来ますね」
今まで口を出さずに静観していた芽依が急に立ち上がり
嬉しそうに居間から出て行く。
何の準備なのか少しばかり気になる。