④
「あのさ、人形の破片や通路の焼跡はそのままにして
良いのか?」
階段を降り、迎えが来るのをアパート前で待っている時に
気になる事が有ったので奏は少女に質問する。
2人は奏の両隣に立っており、右側にいる朱音は
イヤホンをして音楽を聴き、逆側の少女はスマホを
触っていて後処理をする気が無い様に感じる。
あのままで放置されてたら騒ぎになりそうだが。
「散乱してた破片は全部消滅させたし、焼跡は認識阻害を
施したから大丈夫だよ」
既に対処済みだと少女が教えてくれるが、今の説明でまた
奏の中で疑問が増える。
「認識阻害って何?」
「簡単に言うと、異常を発見しても普段と変わらないと思い込ませる事かな。そういえば君の怪我も応急処置しとかないとね」
そう言うと奏の隣から目の前に移動して、鎖骨に手を置く。
「あっ、今傷口触ったら駄目だからね」
注意してくれるが態々触る気などなく従う。
「よし、OK。もう傷に触っても良いよ」
少女は元いた位置に戻り、温和な笑みを浮かべ報告してくれる。
何が変わったのか気になり首に付けられた傷に触れると、
既に瘡蓋が出来ていて血が止まっている。
「ありがとう」
奏は戸惑いつつも少女にお礼を言う。
「家に着いたら傷は完全に治しちゃうから。それまで待っててね」
「あのさ、着替えに戻ったら駄目かな?」
左肩を指差し少女にお願いする。
傷は塞がったが服は穴が空き、血に染まって汚れてしまっている。
今から向かう家でうっかりで汚してしまうかもしれない。
少女から了承を得たので着替えに部屋に向かう奏だが
「…何で着いてきてんの?」
鍵を開ける前に振り返って、後ろをつけて来た朱音に問い掛ける。
先程まで着けていたイヤホンは外されていた。
「逃げない為に見張ってんのよ。戻るのが遅かったら蹴破って入るから」
「分かってるよ」
脅しではなく本当に実行してきそうなので、着替えを済ませる為、急いで部屋に入る。
着替えを終え、先程迎えを待っていた場所に戻る。
「あんた達ってさ、何者なの?」
一度朱音に聞き無視された事を少女にも問い掛ける。
「そういえば自己紹介もまだだったね、私は藍塚芽依、そっちは三春朱音」
自身を指差した後に、奥でまた音楽を聴いてる朱音を
指差す。
「矢瀬奏です。」
今更ながら自己紹介をする。
「矢瀬君か、これから宜しくね。それで私達はね、魔女って
呼ばれる不思議な力が使える人間なんだ」
微笑みながら芽依が自分達の正体を明かしてくれた。