《安心》 《茶》 ほか
《異世界》彼は異世界からきたと言っている。貴方とは違う存在だと主張している。異世界からきた証拠はと聞いたらこう言った。「僕の爪を見てごらん。オレンジ色をしているよ。君たちとは違うんだよ」 何言ってるんだか。この世界には爪どころか目や肌の色の違う人がゴマンといるよ。
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《疲れた》僕の足下は、いま足の乗っている部分以外は溶岩だ。僕のすぐ後ろには椅子があるけど座れない。何故ならそれは電気椅子だから。逃げる事もできない、座る事もできない。でも疲れてきたなぁ。座っちゃおうか、座っちゃおうか。永遠に座り続ける事になるけれど。
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《確率》占い師に言われた。「貴方の確率は99パーセント」だと。何の確率かを聞く前にその占い師は死んでしまったけど、何の確率かはわかっている。それは僕が人類を滅ぼす確率。いま手に持っている超最悪の細菌兵器をこれから撒く確率。
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《明日》今日、アナウンサーが言った。「明日が世界の終わりです」 次の日、別のアナウンサーが言った。「明日が世界の終わりです」 そう言ったアナウンサーは皆つぎの日に死んだ。そして今日は僕が言う番だ。「明日が世界の終わりです」
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《旗》旗を作った。団結のための旗。地球を滅亡から救うための旗。でもみんな知っている。その旗を作る事が人生最後の仕事になるという事を。
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《快感》俺は蔵の奥深くで巻物を見つけた。巻物には状況を打破する方策が書いてある。従えば世界は滅亡から救われる。でも俺は巻物を燃やした。だって楽しいじゃないか。間接的ではあるけれど、俺が世界を滅ぼす事になるんだから。快感、快感。
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《安心》最愛の女房が死んだ。でもどこかほっとしている。今まで心配のし通しだったから。婚約を破棄されたらどうしよう。成田離婚されたらどうしよう。退職した日に別れを切り出されたらどうしよう。ずっと心配だった。でももう心配ない。女房を殺した僕の選択は間違ってはいなかった。
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《観客》僕の部屋のテレビには常に同じ映像が流れている。それは椅子に座った観客たちがこっちを見て、泣いたり笑ったりしている映像。彼らは僕の人生を描いた映画を見ている観客。そう思えばつらい事なんて無いさ。この人生は映画なんだから。本当の人生じゃないんだから。
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《夢》こんな話をよく聞く「自分が蝶になって花畑を飛んでいる夢を見た。それは本当に夢なのか、そう思っている僕自身が蝶の見ている夢にすぎないのか」 でも僕はもう一つの可能性を考える。地獄の釜にゆでられている自分が、つかの間見た二つの夢なのではないかと。
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《茶》給湯室でお茶をいれながら考える。ここに毒を入れたらどうなるかを。アホ課長はどんな顔をして死ぬのだろうか。考えただけで楽しくなる。私はいれたばかりのお茶をまず最初に失敬した。すぐに呼吸が苦しくなり私は絶命する。物陰で課長が嬉しそうな顔をしているのが最後に目に入った。




