《冷凍》 《遺憾》 ほか
【妻の最後の料理について語る男。しかし刑事は……。】
【”遺憾”を繰り返す宇宙人。その真意は……。】
《冷凍》
「冷凍室にある料理、妻の最後の手料理なんですよ。妻は突然逝ったので、食べてしまったら本当にもう居ないと認めるような気がしましてね。喧嘩もしたけど、失って初めて妻の大切さに気づくなんて…」「愛してたんだね。じゃぁ、地下室の冷凍庫にあった奥さんの遺体について話そうか…」
-------------
《忌》
「こっちは全然関心ないんですけど、向こうは優しくするとか大切にするとか言って来るんです。今まで散々私を痛めつけたくせに。でも言っている傍からまた傷つける…。退いてくれないし私にはなす術がない。どうしたらいいんでしょうか…?」地球から人間についての相談を受けた神は困り果てた。
--------------
《印象》
今の時代、完全テレワークで会議や取引は全てモニタを通じて行われ、実際に会う事はない。「良心が痛むな」私は印象を良くする為に偽の顔画像を使っている。悪い事だが円滑に物事が進むのも確かだ。「でも…」当事者全員が美男美女というのも、何か不自然な気がする今日この頃であった。
-------------
《救い》
俺は二度目の死を迎えた。初めの人生は不遇だったが、悪魔との契約で異世界転生し十分楽しみ満足した。「悪魔よ、詐欺はやめよ。お前は一瞬の幻を見せただけだろう」天使が問う。「本人が現実だと思ってりゃいいんだよ。何も救えないお前らに言われたくないね」悪魔は魂をペロリと平らげた。
-------------
《遺恨》
「首相、ゴバ星が友好交渉をやめると言ってきました」秘書官が叫ぶ。大変和やかに交渉していたのに…。だが首相は忘れていた。若い頃、宇宙ネット掲示板に現ゴバ星リーダーについてクソミソに書いた事を。"そんな昔の事"…、でもそれは書いた方の勝手な思い込み。書かれた方は忘れない。
--------------
《幸せ》
俺は何百回も同じ一カ月を繰り返している。SFでお馴染の状況だ。でも俺はそれを回避する気はない。このままが良いからだ。何事もなくただ穏やかな時間が過ぎていく。それがずっと続く。こんな素晴らしい事があるだろうか。学ぶ事は沢山あるし、退屈なんてない。俺は永遠の幸せを手に入れた。
--------------
《駄洒落》
地球は宇宙人に侵略され降伏した。抵抗など出来ぬ圧倒的な支配。ただ奴隷にされたわけでもなく、幾つかの不便を除けばむしろ安定した世の中になったとも言える。未だにレジスタンスを気取る連中もいるが、俺はこう思うようにした。「降伏したのが幸福だ」まぁ、日本人以外にはわからねぇか。
------------
《職》
未来、就職は益々困難になり大勢が職探しに歩いていた。しかし生活の心配はない。政府が就活している事を条件に最低限暮らせる資金を無期限で給付しているからだ。そのため職探し自体が一つの「職業」と化している。俺もキツイ今の職場をやめて「職探し」という職に転職するか…。
------------
《興》
年老いた学者の私は、孤島で仮死状態の怪獣を発見した。ゴ○ラなんて目じゃない代物だ。だが発表はしない。私は時限爆弾を怪獣にセットして島を去る。爆弾はランダムに作動し、予測は付かない。奴の目が覚めれば世界は滅びるだろう。名声よりも、それを密かに待つ老後の方が楽しいじゃないか。
--------------
《遺憾》
「誠に遺憾であり遺憾の極みです。遺憾と言わざるを得ず、遺憾の念で一杯です」大きなミスで地球に損害を与えたボリ星の代表が繰り返す。「先ほどから"遺憾"を繰り返しているようだが…」地球代表は渋い顔。「だって地球では"遺憾"と言っていれば責任を取らなくてもいいのでしょう?」




