《宗教》 《野獣》 ほか
《償い》「世の中に償いをしたいという願いが叶う事になったぞ」刑務所長が言う。「猫を被っていた成果だ。楽な施設へ行けるぞ」無期懲役囚はほくそ笑み護送車に乗る。「哀れだな。超健康体が評価され、全ての内臓を摘出し移植用のクローン素材になるとも知らずに」刑務所長が呟いた。
---------------------------
《鎧》俺はうっかり呪いの鎧を装着した。着たが最後、延々と走り続ける鎧だ。食べる事も休む事も出来ず、もちろん垂れ流しとなる。鎧の中に汚臭が漂う中、俺は走り続ける。いつしか臭いは消え、かわりにカランコロンという音が響き渡る。俺の骨が鎧の中で踊る音だ。あぁ、俺はいつ止まれるんだろう。
-----------------------
《宗教》地球と異星の条約交渉。異星側の代表は不機嫌だ。「我らは宗教を大事にする。だが地球では宗教を金儲けに使う連中が大勢いる」「誤解です。一部のカルトはそうですが、殆どの者は宗教を尊びます」必死の地球側。「嘘をつけ。ではクリスマス商戦とか称して大金が乱舞するのは如何なる事か!」
---------------------
《絵》その魔法絵師は画布に書いた物を具現化する事が出来た。ある時、彼は理想の女を描き、それは具現化し命を得て二人は結婚した。彼は魔法を使わず妻の姿を描こうとしたが、妻は頑なに拒絶した。彼は妻の就寝時に密かに描いたが、途端に妻は画布に吸い込まれ、二度と彼の前に現れる事はなかった。
---------------------
《正月》明けましておめでとう。何度言ったろう。でも、めでたかった事など一度もない。でもそんなボクにもやっと人生の終わりが来た。これで苦しい事ともオサラバだ。寝る事が大好きなボクとしては永遠に眠れるのは至高の悦びである。さぁ、これで胸を張って言える。”人生、閉めましておめでとう!”
----------------------
《愛は》亜光速航行する宇宙船の中で若い男が呟く。「船内では1年しか過ぎていないが、外界ではあれから60年が経っている。旅立ちの日、冷凍睡眠で待っていてくれると言った彼女は大丈夫だろうか…」確かに彼女は待っていた。だが男は知らない。旅立ちの日からほどなく、冷凍睡眠が禁止された事を。
-----------------------
《野獣》俺は呪いをかけられ野獣の姿となった。誰も相手にしてくれない。俺は開き直って暴虐の徒となり魔王と呼ばれた。俺の容姿を言う者はないが、鏡の中には醜い野獣の姿がある。だが俺は知らなかった。俺の姿は何も変わっておらず、ただ心の状態が俺だけに鏡の中の姿となって見える呪いである事を。
-------------------------
《夢》病院の個室ベッドで不治の病の俺は、歓喜に震えた。恨み重なるヤツが殺されたニュースを見たからだ。次の瞬間俺は発作を起こし絶命する。「先生、これで良かったのでしょうか」看護師が問う。「あぁ、個室のテレビに偽のニュースを流してから、死に至らしめる。これも安楽死の一つの形だよ」
-----------------------
《告白》あの娘への無謀な告白を悩む僕の前に”告白しちゃいなよ妖精”が現れた。都市伝説に聞いた告白を猛プッシュする妖精だ。その気になった僕は告白するがこっ酷く振られる。数日後、悪魔が現れ娘への復讐を僕に囁いた。妖精と悪魔はグルではないかと一瞬考えたが、そんな事はもうどうでもいい。
-------------------
《駒》俺は敵兵がチェスの駒に見えるゴーグルを着けている。殺人の精神的負担を減らす装置であり、まるでVRゲームの感覚だ。だがある時、俺は腹部に銃弾を受け倒れ込み、その拍子にゴーグルが外れた。眼前には類似の装置を付けたニヤつく敵兵。奴はまるでチェスの駒を撃つ様に俺の眉間を貫いた。




