《新種》 《馬鹿》 ほか
《新種》「昔はスギ花粉に苦しんだそうですね」助手は実験樹木を前に教授に尋ねた。「あぁ、だがこの木の花粉は健康に役立つ」「成功するといいなぁ、政府も良い事を推進する」(既に成功しとるよ。この花粉は政府に好感を抱かせる作用があるのだから)厳重にマスクをした教授が微笑んだ。
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《価値》この時代、生きる為には「生存免許」の取得が必須であった。「部長、貴方はまた多額の賄賂を取り不正に免許を交付しましたね?」「そうだよ。何が悪い。多額の収入を得る能力。そしてそれを我ら役人に賄賂として届ける心がけ。正に生き続けるに値する人物と言えるのではないかね」
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《反省》俺は新たに制定されたネット犯罪法の最初の生贄にされた。俺が冗談で書き込んだものが多くの人に多大な損害を与えたのだ。俺は必死に反省の弁を繰り返したが認められず、懲役15年の刑が確定した。収監される日、俺は無意識に呟いた。「俺が悪いんじゃねぇ、ネットが悪いんだ……」
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《馬鹿》"バカは死ななきゃ治らない"それが実践される時が来る。レル星人の科学により一度死に、蘇る過程で脳細胞が飛躍的に活性化する治療がもたらされた。「地球の皆さん、死んで天才になりましょう」人々は天才を夢み次々と自殺する。だが誰も蘇る事は無い。レル星人の侵略は終わった。
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《意地》未来、日本の平均寿命は極度に延びた。納めた年金の元を取ろうと必死に長生きした結果だ。そのため医療費は国家財政を圧迫し、年金だけで暮らせない者は犯罪に手を染めた「あの時○○総理が……」とソイツを恨みつつも「元を取るまで死ねるか!」が国民のスローガンとなった。
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《機能》カメラに付けたお遊び機能の効果でその会社の製品はバカ売れした。「単純な仕掛けだが開発者の君には感謝しとる」社長は自らが撮った幽霊が二人写っている写真を見せながら言う。「心霊写真モドキが撮れるとは斬新なアイデアだ」「……社長、幽霊は一人しか写らない筈なんですが」
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《自覚》「幽霊は絶対いる!」「いるわけがない。世迷言を言うな」いつもの様に何処かの討論番組で激しいやりとりが展開されている。それを遥か上空で天使が見守る。「うーん。教えてやろうかどうしようか。神さまの逆鱗に触れて、あんたらみな一瞬で死に絶え、既に全員幽霊なんだけどなぁ」
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《友好》「地球人に友好の意を示すにはどうしたらよいか?」ドズ星の王様が宰相に聞く。「はい。調査の結果、一部の種族は"お年玉"というものを喜ぶそうでございます」「では、早々に実行せい」贈り物をした数日後、ドズ星王は地球を訪れた。無数の隕石で滅亡した後の地球を。
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《ゲーム》俺は制限時間内に指定された死体を見つけるゲームに参加した。死体は病院や葬儀社、警察など何処にあるかわからない。荼毘にふされるとゲームオーバーだ。成功すれば多額の賞金を得る事が出来る。俺は必死に捜す。何故なら失敗すれば今度は俺の死体が捜される事になるのだから。
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《狼少年》「緊急襲来速報!」だがすぐに誤報と判明。異星人襲来予測装置も外ればかりでは意味が無い。皆、次第に信じなくなった。「司令官。もう地球侵略の頃合ではありませんか」「あぁ、わざと遮蔽装置を切り、またすぐに元に戻す。奴らを油断させ一気に叩く作戦は成功のようだ」
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《証》「それは言い訳だ」十数年前、試験官のミスで解答時間が大幅に短縮され試験に落ちた後、俺は担任教師に罵られた。「そうかもな。ではそれを証明して貰おう」今、試験官となった俺の目の前に、あの教師の息子が受験生としている。俺のミスで試験時間が大幅に削られるとも知らずに。
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《真実》私はいま車のトランクに押し込められている。理由は簡単。「100%嘘を見抜く装置」を開発したと発表したからだ。そんなものが世に出回っては困る者がいるらしい。私は殺されるのだろう。あぁ、功名心の為に「100%嘘を見抜く装置」を発明したなんてウソをつかなければ良かった……。




