《笑み》 《続編》 ほか
《笑み》「あの方、いい方ねぇ」近所の主婦仲間達が話す。「愛想はいいし育ちは良さそうだしアナタとは大違い」れいの如く一番立場の弱い私を苛めて楽しんでいる。愛想笑いを返す私。だけど心の中でも笑ってるんだ。何故なら私は彼が詐欺師だという事を知っている。間もなくこの人達が手酷く騙される事も知っている。
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《記録》監視カメラ社会が発達し犯罪が激減した。人々のカメラへの嫌悪感も無くなり新商売が出始める。アリバイ証明システムだ。体に機器を埋め込むとあらゆる地点で撮影された映像がまとめられアリバイの証明となる。尤もそれがネットに流れてプライバシー丸出しになった奴もいるのだが。
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《労働》法律が改正され、企業は百歳定年を義務付けられた。だが労働者の健康維持は、あくまで自己責任。ある労働者が呟く「定年が延びたのはいいが、健康を維持する為の人工臓器の購入は自腹だ。そのローンの支払いの為には働かねばならない。俺は一体何の為に働いているんだ……」
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《因縁》彼は古い人工衛星。もうすぐ地球へ落下する。用済みになった途端、みな彼をゴミ扱い。彼は悔し涙を流しながら大気の摩擦で燃えていく。地方紙の小さな記事。"老人が後頭部を殴られ死亡。近くで凶器らしい焼けた金属塊を発見。被害者はかつて人工衛星の開発に携っており……”
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《褒》今は密告時代。だが昔のような悪い意味は無い。何故なら善行を密告するのだから。悪行の密告が横行してた頃はギスギスした世の中だった。しかし自分の善行が評価される可能性があれば、自然と良い事が出来る。そして僕は今日も誰かの善行を密告する。勿論その人からお金を貰って。
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《幕》長かった。私が担当になって80年。もう体も心もボロボロだ。だがその苦労も間もなく終わる。人間が地球にとって有害だと判明し全人類が人口冬眠に入って1000年。地球が完全再生するまでは地上に人間は管理者一人しか存在しない。あぁ、交代の者が来た。私に「死」という褒美を携えて。
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《発売》「この家事ロボットが何と10万円!」TVから威勢のいい掛け声。通販番組でロボットを販売し、富裕層へ飛ぶように売れる時代。だが昔ながらのロボットではない。低所得ゆえ人権を失った者たちが「ロボット」という製品名で売られるのだ。こんな未来は、もうすぐそこまで来ている。
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《続編》俺は続編屋の世話になった。多額の費用が必要だが、今あるトラブルを解決し人生の続編を始めさせてくれる商売。……確かに新しいスタートをきれたが何かパッとしない。俺は続編屋に抗議した。「お客さん。大当たりする続編なんか、ごく僅かですよ。映画でも人生でもね」
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《職》「異星人対策室長に任ずる」俺はそう言われ職責をえた。地球外生命体への対応一切を任される。だが私一人だけの職場。又こんな辺境の惑星に来る異星人がいない事は私が良く知っている。処遇に困って無理に用意された職なのだ。突発性ワームホールに出会い、この星に流れ着いた私への。
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《国家》僕は犯罪を見かけ犯人の後をつけた。危険だが正義の為。だが気取られて意識を失わされてしまう。朦朧とする中で誰かの会話が聞こえる。「変な正義感を持つ奴がまた食いついた。彼も脳手術で正義に無関心な人間にしよう。国民に大切なのは正義ではなく正義のフリをする事なのだから」




