《通り魔》 《犬》 ほか
《提案》その頃、世界には人類愛が溢れていた。百花繚乱の慈善団体が活躍し世界に愛をと息巻いた。そんな時、突然神様が現れ、こう提案する「健康な全人類一人一人の寿命を一年だけ減らせば、その寿命を不治の病の者に分け与え長生きさせよう」数日後、全ての慈善団体は解散した。
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《時間》「ほら、ご覧。いま見えるあの星の光は、本当は何万年も前に放たれた光なんだよ」夜空を見上げながら父親が小さい娘に語りかける。「皮肉なものだな」かつて地球と呼ばれたらしい死の星で、滅亡前に記録されたと思われるこの星の親子の映像データを見つけたホレイン星人が呟く……。
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《追跡》僕の体にはGPS機器が埋められている。僕だけではない。この時代、相当の変わり者でなければ皆そうしている。極度に孤立化した社会。こうでもしなければ誰も他人との繋がりを持てないのだ。その時、故障を告げるアラームが……。僕はパニックに陥った。「誰か、僕を見つけて!」
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《平和の使者》「鳩は正に平和の使者です。皆さんで大切にしましょう」平和主義者が演説する。その時、空の彼方から飛来する黒い雲。実際は雲ではなく無数の鳩の群れ。鳩たちは平和主義者の頭上に次々と糞を落としていく。全ての鳩が去った後、平和主義者は糞にまみれて死んでいた。
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《通り魔》僕は街中で標的を物色する。丁度いい奴がいた。寿退社の送別会帰りの女。僕は人気のない夜道で背後にせまる。女は一瞬こちらを見たが僕はそのまま追い越した。いま彼女の希望にナイフをつき立て殺した。明日になれば女は婚約者にその破棄を申し出るだろう。僕はそういう通り魔。
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《都合》俺は今あいつを殺してきた。用意周到に実行したのでばれる事はないだろう。あいつがいけないんだ。あいつが自分は無実なんて言うから俺は公の場であいつを徹底的に擁護したのに……。今更、真実を告白されても困るんだよ。俺の社会的地位まで滅茶苦茶になっちまう。俺は悪くない!
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《犬》僕は裁判で「犬」認定の判決を受けた。人権は剥奪され犬と同じ権利しか持てないのだ。裁判所の外では人権を失くした俺を叩きのめそうと多くの連中が待ち構えているだろう。でもいいさ。保健所送りになる前に一人でも多くかみ殺してやる。僕はそれが許されている「犬」なんだから。
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《成長》「ぼうず、上手いぞ」3歳の息子が人形を破壊銃で壊す。俺は息子の成長ぶりに思わず口元が緩んだ。「今度、射撃の的用に地球人を2~3人買いましょうよ。早いに越した事はないわ」妻が横から口を出す。我らザギロ星人が地球を支配して100年。地球人狩りは紳士のスポーツになっている。
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《裁判》検事「被告人は残虐です」弁護士「情状酌量を」裁判官「では懲役8年」 この未来の裁判には現代と一つ違う所がある。検事と弁護士と裁判官は全て同じ人物なのだ。だが問題はない。正しい判決は既にコンピューターが出している。何事にも《儀式》が必要なのは今も昔も変わらない。
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《ショー》今日は皆既月食。天体ショーに大勢が酔いしれる。だが月の裏側の宇宙船には誰も気づかない。「気が引けるな、哀れで」「仕方ない。月を消滅させて地球に天変地異を起こす計画なんだから。彼らにとって最後のショーを見せるのが慈悲ってもんだ」欠けた月はもう二度と元へは戻らない。




