《格差》 《予知》 ほか
《格差》「あのエリート若造上司、人を年寄り扱いしやがって」中年のヒラ会社員が呑み屋で愚痴る。しかし「自分だっていつかは歳をとるのを忘れてやがる」とは言い出さない。今や地位の高い者は不老の施術を受けられいつまでも若いのだ。あぁ、嘆かわしや。格差は更に広がるばかり。
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《予知》僕は予知能力があるせいで気味悪がられていた。「お前と同じバスになんて乗れねぇよ」 登校時のバス停でイジメのリーダー格が毒づく。他の連中も誰も文句を言わない。バス停に取り残された僕は一人ほくそ笑む。「別にいいよ。だって僕の予知によるとそのバスは大事故に遭うんだから」
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《妊娠》私は妊娠発表記者会見をした。相手は青年実業家。本当は違う男の子供なんだけどかまわないわ。そいつの血液型は彼と同じだしばれっこない。落ち目になったアイドルの私にはいい花道よ。こうやって世間に発表もしたしね。でもその時の私は知らなかった。彼がパイプカットしていた事を。
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《中止》その新型家事ロボットは販売から間もなく全てが回収され廃棄された。それはロボット反対派の作戦勝ち。何体かのロボットに反対派自らの脳を移植し人を殺す。その後、自爆し証拠を残さない。人を殺す勇気のなかった僕はロボットのまま、いま廃棄物処理場にいる……。
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《念願》世界首相になった私は念願の地球破壊爆弾発射ボタンに指を乗せた。今まで猫を被ってきたのもこの地位に付くためだ。究極の抑止力とは片腹痛い。私は思いっきりボタンを押す。体中に電流が走り私は絶命した。そうか、この"存在しない"兵器は私のような者を抹殺するために……。
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《手術》僕は眼の手術を受けた。選ばれた人にしか施されない手術。善人と悪人を見分ける能力が備わるのだ。でも世の中の全てが悪人とわかり僕は絶望し自ら命を絶った。「この若者も失格ですな」「あぁ、世の中全員が悪とわかっても動じない心がなければ、わが社の幹部候補生にはなれんよ」
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《電動》電動歯ブラシ、電気鉛筆削り、電動自転車。何でも自動にすりゃぁいいってもんじゃないよ。でもこの電動ページめくり機は便利だなぁ。「次」と言えばアームがページをめくってくれる。読書好きにはたまらんね。え? 電子書籍? あぁ、何か大昔にはそういうモンがあったっていうねぇ。
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《記憶》長期の宇宙旅行。狭い船内でのトラブルを避ける為、必要のない限り、不都合な記憶を封印する装置が配備されている。そのおかげで不必要な嫌な事は忘れ、みな和気藹々と過ごしていた。ただ俺にはどうしても気になる事が一つ。出発した時の人数に一人足りないのは何故なんだろうか……。
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《政策》「親父の稼ぎが悪いから俺は早死にだ!」そう言い残し俺は家を出た。親の所得額で子供の基本寿命が遺伝子レベルで制限される法律が出来たせいで俺は長生き出来ない事が決まっている。自暴自棄の俺は大量殺人者となった。そう仕向ける事が政府の人口削減策の一つとも気づかぬ内に。
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《愛》全ったく、夫婦の愛情を測定する機械なんて何処のバカが発明したんだ。おかげで俺は毎朝の測定に冷や汗の連続だった。だが今は何の不安もない。測定値はいつも最高だ。測定値を偽るアプリを闇市で手に入れたお陰なんだが、案外この機械を発売している会社が流してるのかもしれないな。




