《依存》 《金》 ほか
《棄権》僕は面接をドタキャンした。父を自殺に追いやった企業の面接でこの手榴弾を使おうと思っていたのだが。復讐の為に手榴弾をくれた友にこれを返さなくては。その時、手榴弾が爆発した。それには手動以外に時限装置も仕掛けられていたらしい。そうか。僕自身が爆弾だったんだな。
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《感染》僕らがここに監禁されて15年。僕らはさる科学者がばらまいた正義ウイルス感染者だ。空気感染するため隔離された。でも不思議だなぁ。感染条件は同じ筈だったのに、政治家や大企業経営者は誰も感染しなかったらしい。これでは僕らの人権を彼らに訴えても到底受け入れられるはずもない。
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《暴動》人々は暴動を起こした。理由はイル星から来る予定だった超人気歌手の突然の公演キャンセル。しかし気持ちがわからないではない。だって軌道が長周期のこの星がイル星に再び接近するのは、このさき一万年後の事なんだから。
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《処理場》大変な事になった。我が星から出るゴミの処分を各惑星が拒否し始めたのだ。上手く行くと思ったのだがなぁ。ゴミ、つまり平和だの平等だのと甘い理想を唱える連中を他星に押し付ける「移民政策」は失敗か。
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《依存》今日も患者が大勢詰め掛ける。A医師は依存症に良く効く薬を処方する。そう、現実を見ずに、夢に依存し続ける彼らのために。昼食のあとA医師は薬を飲む。夢を抱けず、現実に依存する症状を和らげるために。
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《発見》取材班は色めきたった。奥地で幻の動物を発見したのだ。「いま、我々は世紀の大発見に遭遇しています。何とセックスによって子孫を増やすという幻の太古の種族に遭遇しました」 人造精子と人造卵子から生まれ、生後すぐに大部分を機械に交換する現代人には正に驚きの発見だろう。
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《論議》科学者が宇宙の彼方での議論を偶然傍受した。様々な宇宙種族がある事柄について議論しているのだ。それは「ゾガリス」を廃棄するかどうか。ゾガリスの意味はわからなかったが、人々は宇宙の彼方の出来事にロマンを抱いた。ゾガリスが地球を意味しているとも知らずに。
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《因縁》「オトシマエつけてもらうぞ」イカサマ賭博に手を出した僕はヤクザに小指を切断された。「これで勘弁してやる」彼らが去ったあと僕は呟く。「地球人の彼らは知らないんだな。僕らピエ星人の再生能力を」 僕は再生し始めた小指を眺め、初めての星で破目をはずした事を少し後悔した。
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《拒否》官邸に押し入った犯人が言う「逃走防止の為、下着姿になれ」首相は困った。今日は党首討論。彼は占い師の指示で女物の下着を着けていた。異常な行為だが彼の政治活動が順調なのも占い師のおかげ。「早く脱げ」せかす犯人に彼は毅然と言い放つ「私はテロリストの要求には屈しない!」
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《金》「今日こそ取り立てるぞ」イグ星の金融業者が宇宙船の中で呟く。地球は彼らに多額の借金をしているのだった。地表に降り立った彼らが見たのは誰もいない廃墟「他の星人が全滅させたのか? それとも核戦争で自滅?」 夜逃げという概念のない彼らが事態を把握するにはまだ少し時間がかかった。




