《嘘》 《幻》 ほか
《反省》宇宙飛行士の僕は不祥事を起こした。世間からの激しいバッシング。しかし人気飛行士の僕は謹慎期間のあと謝罪をした「フリ」をして許された。年月が経てば皆わすれてしまうだろう。僕の将来は順風満帆だ。でも僕は知らなかった。隣にいる副操縦士が整形をした被害者遺族である事に。
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《離婚》俺は最近3度目の離婚をした。過去の妻同様、彼女と子供には離婚保険から月々補償金が支払われる。ま、俺なんか少ない方だよ。離婚保険が出来てから1人の平均離婚回数は5回だしね。保険料も馬鹿にならないが、最悪死後の臓器提供で賄われるんだから、いい世の中になったもんだ。
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《名前》俺は悩んでいた。念願のパミル星公演を決めたのだが同星では俺の名前をそのまま使えない。パミル語ではとても下品な言葉になるらしいのだ。通訳が用意してくれた俺の名前に極力近いパミル語を使うしかない。俺は歓迎する記者団を前にこう言った。「皆さん、私がクソバカヤロウです」
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《幸運》僕はその日、とても幸運だった。出かけた博物館の100万人目の入場者として各種特典を受ける事が出来たからだ。しかしその帰り道、僕は通り魔に襲われ殺されてしまう。薄れ行く意識の中で犯人の独り言を聞いたような気がした。「あぁ、こいつで記念すべき100人目の殺人だ」
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《嘘》「幼稚な嘘をつくな」俺は部下を叱責した。最近の若い奴はバカな嘘をつくものだ。俺は席につき朝刊に目をやる。一面には我社倒産危機の見出し。だがそれを信じる社員は一人もいない。みな朝礼での俺の言葉を信じきっている。「嘘はこういう風につくもんだ」俺は心の中でそう呟いた。
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《穴》「裁判長の目はフシ穴だ」俺は記者達を前に息巻いた。実際は犯人なのだが弁護士に従い、無罪を主張したのに。「書くんじゃないよ!」俺は張付く記者達の鉛筆を奪い、先を急いだ。そのとき足が縺れ階段を転げ落ちる。落ちた拍子に突き刺さった鉛筆を抜くと俺の目はフシ穴になっていた。
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《くじ》この季節、国民は必ず「命くじ」を買わされる。当選者は人口削減の為に安楽死させられるのだ。当たった者は、くじの利益から一千万円が支給され、3ヶ月後に冥土へと旅立つ。俺は当らないと評判の発売所に並ぶ。気休めだが何もしないよりは幾らかマシだ
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《記憶》「本当にいいんですね」悪魔は念を押した。俺は全ての記憶を悪魔に売る契約をしたのだ。かまうもんか。人生何も良い事はなかったんだ。悪魔が呪文を唱えると俺は全てを忘れ傍らには大金があった。俺は叫ぶ「俺は何者なんだ!何でも渡すから俺に記憶をくれ」傍らで悪魔が微笑んだ。
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《優勝》「良かった。今年も優勝できた」プロ野球チーム監督の俺は胸を撫で下ろした。国家機密なのだが圧倒的武力で地球を侵略しようとした宇宙人と「特定のプロ野球チームが優勝できなかったら占領して結構です」なんてその場しのぎの約束をしちまったんだよなぁ、あのバカ首相は。
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《天才》世界中で特別な場所が発見される。その場に立つと天才になれるスポット。政府が立ち入りを禁止したが人々の勢いはとまらない。誰もが天才の歓びを知る事となる。でもまだ誰も気づいていない。全員が天才になった瞬間、それは人々の差がなくなり凡人だらけの世の中になる事を。
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《幻》その山に「幻の動物ツチノコを捕まえよう」と題したツアーが到着。我先にと山に分け入る人々。半信半疑だが万が一の可能性を考え熱が入った。その頃、海王星の側を異星人のツアー船が通る。「皆さん、ツアーも佳境に入りました。この宙域には幻の生き物と言われるチキュージンが……」




