《降臨》 《オチ》 ほか
《降臨》「創作の神よ、舞い降りたまえ!」〆切間近の俺は必死にそう念じた。次の瞬間、身長500メートル、体重1万トンの神の足下で俺は圧死した。
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《引き出し》引き出しを開ける。そこには幸福があり、私は喜んだ。でも二重底の下に不幸がある事を、私は全く気づかなかった。
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《オチ》小説家になったもののヒット作は出ず、借金ばかりがかさむ日々。俺は闇金にまで手を出し返済しきれず逃亡する破目に。断崖絶壁に追いつめられ俺は思った。「これは夢なんだ。悪い夢に決まっている」今まで夢オチを軽蔑してきたが、心底それを願っている自分が今ここにいる。
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《水》ウォシュレットで用を足しながら、俺はさっきTVで見た式典の水のアトラクションを思い出していた。「同じ水でも世界が注目する水もあれば俺のケツを洗う水もある。考えちゃうねぇ」その時どこからか声が聞こえたような気がした。「そんな事いえる立場かよ。同じ人間でも……」
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《夜明け》「このまま夜が明けなければ、ずっと一緒にいられるのに」彼女が僕の腕の中でつぶやく。「ほんとだね。いつまでもずっとこうしていたいよ」そうこたえながら僕は太陽のおしりを突っついた。
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《月》ココは月面、死の世界。生まれてからずっと死の世界。でも、生を知らない分、死を恐れる事のない世界。そこが死の星となった地球と違うところ。
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《空気》「いいのかなぁ」僕は手元の「空気読み機」を覗き見た。この大発明の恩恵で皆コミニュケーションを取る苦労が激減した。でも今、機械に示されたのは「相手をぶん殴れ」との指示。僕は疑問を抱きながらも機械の指示に従った。機械には故障というものがある事をすっかり忘れて。
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《退職》私は今日、退職の日を迎えた。仕事のではない。人生のだ。皆がそれを祝ってくれる。そりゃそうだろう。激烈な食糧不足の昨今、くいぶちが一人でも減るのは喜ばしい事だ。もっともこんな世の中に見切りをつけて、人生の早期希望退職に応じたのは私なのだけれど。
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《想い出》世界的なサイバーテロが起こり個人法人のあらゆるコンピューターの記憶装置が破壊される。みな写真や文書をデータ化していたので自らの記録さえ全て消去された。僕は失意と悔しさで家具や物に当り散らす。倒した箪笥の陰から出てきた大昔の母との写真。僕はそれを握りしめ泣いた。
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《賠償》地球のすぐ傍でラゾン星人の宇宙船が爆発した。その影響で地球はほぼ全滅、わずかばかりの人類が生き残った。宇宙裁判所はラゾンの非を全面的に認め彼らは多額の賠償金を支払った。しかしもう元には戻らない。人も自然も文化さえも。お金でしか償えないが、お金では解決できない悲劇。




