《社員》 《電気》 ほか
《鉛筆》この鉛筆を使い切る時、僕の命も消滅する。天使が現れ、そう告げた。でも僕は書くのをやめられない。命を使っているのが実感できて、とても充実しているから。でも、もうすぐ鉛筆がなくなる。僕の命も、もうすぐなくなる。
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《社員》「課長、この会社、登記もしてないですよね。建物だって、俺が入社する一日前まで空き地だったそうですし。一体どうなっているんですか?」俺はくってかかった。「君、社員としての自覚がないようだね。君は一週間前に死んでこの幽霊会社に入社した、幽霊社員じゃないか」
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《歌》僕の隣で妻が破滅の歌を口ずさむ。僕の体は皮がとれ、肉がとれ、骨がとれ、塵と化す。この砂漠の砂は、みんなそうやって出来たんだよ。
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《償い》ボクは走る。地獄へと走る。アイツとカノジョが幸せになるところなんて見たくないし、認めることは絶対にできないから。ボクは走る。地獄へと走る。カノジョを忘れるために。そして、罪を償うために。
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《マジック》愛色のマジックで心のカンバスにたくさん絵を描いたよ。とっても楽しくて嬉しかったよ。でもそれも終わり。だってインクが切れちゃったんだもん。でも大丈夫。悲しみ色と憎しみ色のマジックは、まだたっぷり残っているから。
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《道》キミはいつもあの夜道を歩いていたよね。ボクはキミに寄り添って、すぐ隣の道を歩いていたんだよ。気づかなくてもしょうがないさ。だってキミは生の道、ボクは死の道を歩いていたんだから。でも今日からは一緒に歩けるね。キミがこっちへ来てくれたおかげ。
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《約束》ボクは約束どおりキミの元へ帰ってきたよ。でもキミはボクに気づかない。いいんだ。ボクはとても変わってしまったからね。ボクはこれからもキミを見守っていくよ。キミがボクをどれだけ侮蔑の目で見ようとも、ゴミを見るような目で見ようとも。
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《パイ》さぁ、いらっしゃい、いらっしゃい。心のパイ皮つつみはいかが。喜び、悲しみ、憎しみ、驚き、たくさんあるよ。追加でトッピングはいかが。失恋、昇進、殺人、謀略、なんでもござれ。
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《電気》ボクの涙は、地に落ち蒸発し雲となる。その雲から落ちたカミナリは電線を走り、コンセントを通り、キミの部屋へと必ず辿り着く。ボクの愛とともに、ボクの悲しみとともに、ボクの憎しみとともに。
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《物語》夜、僕は一人でDVDの映画を見ていた。それは悲しい話。とても悲しい話。僕は物語の中へズルズルと引きずりこまれていく感覚に襲われる。でも僕は重大な事を忘れていた。それはプレーヤーにはDVDソフトが入っていない事。それに気づいた時、僕の姿はもう部屋にはなかった。




