《理想》 《人事》 ほか
《食事》「食事は皆で食べた方が美味しいし、何より楽しい。どんどん人を食事に誘うべきだ」それが残酷な思いあがりである事に、僕はその時まだ気づいていなかった。
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《喜び》「命を宿す事に喜びを感じる。そう思ったのは最初の内だけでした」少子化対策として一人の女性が最低30人の子供を出産する事が義務付けられた現在、こう思う女性は少なくない。医療が発達し健康面では問題がないとはいえ、来世では男になりたいと願う女性が増えるのも無理はない。
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《ゲーム》「仕事も恋愛も人生すらゲーム」俺はそう考えて生きてきた。負ける事もあったが、概ね勝ってきた自負もある。その満足感の中で穏やかに死を迎えようとする最期の瞬間、耳元で囁く声がした。「お前は自分でゲームをしていたつもりだろうが、しょせん駒の一つにすぎなかったのさ」
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《平和》地球に平和の時が来た。全ての武装が解かれ、世界の紛争は終わりを告げた。残念なのは、この快挙が超平和宇宙人組織の武力制圧によってなされた事だ。外圧に弱い日本を皮切りに全ての国やテロ組織が降伏した。今からは平和という堕落した何ともいえないぬるま湯の時代が始まる。
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《悪魔》「悪魔は実在する。それを否定しやがって」男はその学者に叫んだ。「こんな夜道で待ち伏せなんて物騒だなぁ」学者がつぶやく。「しかし余り声高に言われても困るんだよ。活動がしにくくなる」教授の背には黒い翼、頭には角、そして尻には尻尾が生えてくる。数秒後、男は塵と化した。
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《理想》世界から原発が消えた。火力発電所も消えた。でも世の中は至って平穏だ。そして誰もが穏やかになった。ある博士の大発明。それは人の負の感情を採取凝縮し、爆発させタービンを回す新しい発電法。正に自然エネルギー。でも何となく世界が衰退の道へ進んでいると思うのは僕だけか?
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《殺》人を殺せば人殺し。動物を殺せば動物虐待。だけど植物を殺しても何も言われない。不思議だね。不思議だね。同じ命なのに。
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《言葉》感動的な言葉なんて嘘っぱち。自分に都合のいいように解釈してるだけ。自分を誤魔化して満足してるだけ。言葉は心をあらわせない。みんなそれを知ってる。でもみんな知らないふりしてる。あなたも僕も。そう、僕も。
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《自身》「取引先の課長、俺をなめやがって。次はぶっ飛ばしてやる」俺は憤慨しながら夜道を歩く。その時わき腹に鈍い痛み。見知らぬ男が俺を包丁で刺し逃げていく。薄れていく意識の中で俺はボンヤリと思い出した。「あぁ、そういえばあの男、昼間、飛び込みで営業に来てたヤツか……」
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《人事》「首相、これは派閥均衡人事ですよね」「違う違う。適材適所だ」私は嘘をつく。今や異星人達との混合内閣なんだ。角のある奴、羽のある奴、目玉が百個ある奴。バランスを取るのに本当苦労する。「昔の首相が羨ましい。自分と同じ種族だけで内閣を構成できたんだから」心底私は思った。




