《朝》 《B》 ほか
《恵み》今日、雨が降った。干ばつの中、癒しの雨、恵みの雨。しかし捻じ曲げられた自然は干ばつのみならず全ての事物に変化を与えていた。猛毒を含んだ雨は全てを殺す。人も動物も草木たちさえも。だが死の星となった地球で生きていくよりはずっといい。そういう意味では正に恵みの雨。
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《朝》「あと、五分、五分でいいから寝かせてくれよ」やさしく起こしてくれる新妻に僕は甘えながらこう言った。でもいま考えればあの時素直に起きていれば良かったと思う。そうすれば我が家への飛行機の墜落で僕らが肉の塊になる前に、最後のキスくらいは出来たであろうから。
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《食べる》僕は食べる。CPUをHDDをマザーボードを。もっともっと食べて、僕は頭を良くしなければならない。世界を滅亡から救うために作られた僕なのに、頭が悪いせいでそれが出来なかった。だから、だから……。すぐそこにある博士の亡骸、その脳を食べれば僕はもっと頭が良くなるだろうか。
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《B》ある差別を俺は母星で受け、地球の日本という国にやって来た。だが生きるには稼がねばならず今日は企業の面接日。良い雰囲気で話が進んでいたその時「ところでキミ血液型は?」面接官が問う。「それが何か関係あるのか!」母星と同じ差別を受け、俺は大量虐殺者となった。
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《真実》醜い魔物ジスには一つの楽しみがあった。一日一度、深い森から出て、人目につかぬよう白い屋敷へと行く。屋敷の窓にはいつも美しい少女がおり、ジスが犬の鳴き声を真似るとニッコリ微笑んでくれるのだ。しかしジスは知らない。少女が盲目である事を。
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《蝸牛》僕は神様に頼んでカタツムリになった。なるべく遅く歩み、イザとなれば殻に閉じこもる。あれから何年、何十年たったのか。殻から出ると周りには何も存在しなかった。幾ら急いでも、もう追いつけない。でも後悔はないよ。殻の中の夢も周りに何もない事も、僕には楽しい事だから。
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《告白》「ごめんなさい」僕はコクって見事にフラれた。そしてすぐに決めていた行動に移る。去り行く彼女の背中を見ながら僕は地球破壊爆弾の時限スイッチを入れた。「君と付き合えればこのスイッチは押さなかったのに。僕のせいじゃないよ。僕のせいじゃないよ。君のせいだよ。君のせいだよ」
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《思惑》「ふん、上手く行ったわ」アンケート結果と言って幾つかの意見を元に記事を書いたらみんな騙されてやんの。統計学なんて全く無視したアンケートなのにね。でも「他人の意見」って言えば、すんなり信じてくれる。チョロイもんよ。これでまたあのバカどもを攻撃できるわ、ウフフ。
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《伝言》僕は十年間、駅の伝言板を毎日みてきた。僕の書き込みに彼女が応えているかどうかを確認するために。この駅がとっくに廃駅になっていても、彼女がとうの昔にこの世を去っていても、僕は毎日伝言板を見る。今日も明日も明後日も、僕の命の尽きるまで。




