《秘密》 《流す》 ほか
《音楽》あ~、みんな私が電車通学中に音楽を聴いていると思っているんだろうな。ほんとはこのヘッドホンから、2時間後にはじまる日本完全破壊計画の最終確認の通達が聞こえているんだけどね。知らぬが仏って感じよね。もっとも殆どの日本人がもうすぐ仏様になっちゃうんだけどね。
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《砂丘》彼はいま果てしない砂丘にたたずんでいる。ついさっきまでは都会の雑踏の中にいたはずなのに。彼が初めてこの砂丘に来た五歳の頃から数えて四回目、前回からは三年たっている。彼は夢を見ているわけではない。ある儀式に欠かせない「アイテム」として四度この砂丘にやってきたのだった。
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《歳》「早く結婚しなさい。三十越えると焦るから」職場の榊田女史が話しかけてくる。何のつもりか知らないが貴重な休憩時間に聞く事なのか。そもそも私は現在340歳なのだ。平均寿命2500歳のゾム星人としては若い方だが私達の種族には結婚という概念がないので、この話は全く意味がない
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《ロボリン》「無敵最終兵器ロボリン」 この巨大人型兵器は無敵だ。しかしこの超兵器は地下1000メートルの場所に埋もれていて誰もその存在に気づかない。このまま朽ち果ててしまうのか超兵器ロボリン! がんばれ超兵器ロボリン。(って何をがんばるんだ)
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《別れ》「本当に行ってしまうのかい」僕は彼女に尋ねた。彼女は黙ってうなずく。僕は内心ほくそ笑んだ。巧妙に罠を仕掛け彼女の方から出て行かせるよう仕組んだのだから。……しかしこの眠気は何なのだろう。さっき別れの乾杯をしてから急に睡魔が襲ってきたように感じるのだが。
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《顔》「この人は本当に私が最初に会った人なのだろうか」探偵秘書の菊子は傍らに立つ雇い主を見てそう思った。この職場に来て3年、彼女は探偵の顔が変わるのを20回は見てきた。そもそも面接時の彼の顔が本物だという保証すらないわけで、顔を変えられたら彼女には全くわからないだろう。
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《R・ストライク》R・ストライク。俺はあの飛行機を忘れない。戦場で共に青春を生きた愛機。50年前に密林に不時着した後、機体はどうなったのだろう。安楽椅子にもたれかけ、ふと突然そんな事を考える。瞼を閉じ意識が薄れていく中、俺は愛機のエンジン音がどこからか聞こえたように感じた。
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《秘密》「俺は重大な秘密を知ってしまった」男は逃げる、逃げる、逃げる。姿なき追っ手からのがれるために。妻も子も友人も、自分の人生さえ捨てて逃げる。しかしそう思わされ、一生逃げ続ける人生そのものが男に与えられた罰だとは、彼自身、生涯気づかないであろう。
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《流す》トイレで用を済まし水を流す。俺自身もこうやって流しちまえないかなぁ。え?汚くないかって。そんなこたぁない。俺の人生、とうの昔にクソまみれだから。
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《今日……》今日、テレビが終わったよ。今日、インターネットが終わったよ。今日、世界が終わったよ。明日から僕は本当に一人ぼっち。
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《送り》夏の初め、僕の部屋に蚊がやって来た。僕は極力血を吸われない様にし、しかし殺したりはせずに、それを生きながらえさせてきた。そして夏の終わり、僕は腕にとまるその蚊を愛おしく見つめながら一気に潰した。その瞬間、この夏のつらさや苦しさが、小さな命とともに消え去った。




