《巻き尺の精》 ほか
《巻尺の精》なぁ、お前ら何かに限界を感じた事はないか?そういう時はな、大抵オレやオレの仲間が、お前らを色んな尺度で測ってるんだ。で、その結果をコッソリ心に耳打ちしてやってるんだよ。お前はもうここまでだよ、ってね。アンタも何か測ってやろうか。絶望に耐える覚悟があるんだったらな。
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《気象予報士》「雨だって言ったよな」エネリアは気象予報士のグリグロに激しく詰め寄った。「私だって神様じゃないんですから……」銀髪の青年、グリグロが必死に抗弁する。「てめぇ、言い訳すんのか? 銀髪兄ちゃんよ。年間契約料いくら払ってると思ってんだ」エネリアの怒りは収まらない。
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《赤い目の青年》地平線の向こう、赤い炎が見えている。無数のものが失くなるだろう。だけど、ここに炎は来ない。何故かって? 最初に風向きくらい計算してるよ。
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《金儲け》「金儲けをして何が悪いんだ。あたしゃ、この地を護る精霊から約束を取り付けてるんだ、どれだけ金儲けをしても一向に構わないってね。当然さ、あの精霊どもが私の祖先にした仕打ちを考えれば」毒づく女主人であったが、その声にはわずかに寂しさが滲んでいた。
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《ヒゲ》この世界で髭が生えるのはワシ等の種族だけじゃ。これは大昔、ワシ等の先祖がこの地を治める神様に授かった、貴重な「能力」なんじゃ。ワシ等にこの地を治める権利を与えて下さった証なんじゃ。それを今の若い連中は、遺伝子がどうのこうの言いおって。あぁ神さま。あいつらに天罰を。
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《決断》少年は思う「もう少しだ。もう少しでこのマスクをしなくても思いっきり外の空気を吸えるんだ。だって政府がそう言っているんだもん」大統領は思う。「もう、もうこれしかないんだ。私の決断は後世では高く評価されるだろう。後世に、この星の人類が生き延びていればの話だが」
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《消毒》私は今日とても不愉快である。それはもうすぐ参謀本部より、あのグロッツク管理官がやってくるからだ。あの男と話した後は心まで消毒したくなる。
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《筋肉パッチ》お客様、筋肉増強パッチをお求めなら、ぜひわが社の製品をお求め下さい。他社の製品は有効期間が短かったり、使用において抑制剤が必要なのに対し、わが社の製品は有効期間1ヵ月、抑制剤の類は一切必要ありません。もちろん安全性も国の基準を満たしております。
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《家》私はゴグ族のジスと申します。私の種族は住む為の殻"住殻"がないと生きていけません。大抵は借り物でして一生不動産屋の世話になるわけです。しかし悪質な不動産屋もおりまして引っかかってしまいました。人間界には国民生活センターってのがあるそうですが受け付けてくれるかなぁ。
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《赤い帽子》あれはいつだったか、赤い帽子の者が生まれたのは。人であれ動物であれ、かの者と出会い、その者が赤い帽子を取るのを見てしまったら、二度と森からは抜け出せない。いや、抜け出す気が失せてしまうと言った方がよいだろう。それが彼らにとって良い事か悪い事かは別にして。




