Episode:98
◇Rufeir
学院へ戻ってきて、数日が過ぎた。
でも戻ったのは、あたしとタシュア先輩だけだ。シルファ先輩は途中で具合が悪くなったらしくて、そのまま屋敷に残ってる。
――大丈夫かな?
姉さんの話じゃ、旅の疲れが出たらしい。心配で帰る前に会おうとしたけど、寝てるからダメだと言われてしまった。
医者を呼ぶって言ってたから、平気だとは思うけど……。
いっそ向こうの屋敷に訊いてみようかと思いながら、制服に着替える。
「ルーフェ、早くしないと朝ごはん、食べそこねちゃうよ?」
「うん、今……」
ナティエスの言葉に答えかけて、気づく。魔視鏡の告知灯が点滅していた。
「どしたの?」
不思議そうに、彼女がドアの影から首を出す。
「なんか……どこかからメッセージ、みたい」
「無視しちゃえば? 朝ごはんのあとでも、間に合うだろうし」
彼女の言うとおりだ。本当に緊急なら、学院へ通話石を使ったほうがいい。
けど今日に限って、気になって仕方なかった。
「ごめん、なんかすごく気になるから……先に、行ってて」
「え? いいの? まぁルーフェがそう言うなら、行かせてもらうけど」
学院の食料争奪戦はすごいから、ナティエスが心配顔だ。
「大丈夫、これだけ見たら、行くから」
「じゃ、おばさんたちに頼んで、ルーフェの分ちょっと取り置いてもらうね」
「ありがと」
お礼を言いながら、急いで伝言を開封する。
差出人は、姉さんだった。
「え……」
急いでタシュア先輩に知らせたほうが、いいかもしれない。中を読んでそう思う。
ただ、探さないと居場所が分からない。
この時間だと、やっぱり確率が高いのは……食堂だろうか? どっちにしても、ナティエスを追いかけたほうがよさそうだ。
急いで鍵を閉めて、食堂へ向かう。
「あ、ルーフェ、こっちー!」
食堂の中には先輩の姿はなかった。代わりにナティエスに呼ばれる。
「ルーフェのぶん、これでいいよね?」
「うん、ありがと」
途中でナティエスと合流したんだろう、シーモアも一緒だ。
「そういえば……ミルは?」
「あいつなら、まだアヴァンさ」
シーモアが答えた。
「なんでも、向こうで爺さんの具合が悪くなったらしくてね。数日様子見てから帰るって、連絡あったらしい」
「そうなんだ……」
身内の人が具合が悪いんじゃ、さしものミルも心配なんだろう。
「それまで静かでいいさ」
「シーモアってば」
思わずみんなで、顔を見合わせて笑った。
「ともかく食べない? お腹すいちゃって」
「そうだね」
みんなで話しながらの、朝食が始まる。
天気のこと、教官のこと、テストのこと、そして夏休みのこと……。
「そいえばルーフェ、今年の夏ってたしか、シルファ先輩と旅行行ってたんだよね?」
「うん」
思いもかけなかったことだけど、いろいろ回れて楽しかった。たぶんナティエスたちは、そのことが聞きたいんだろう。